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第41話

絢人が落ち着いたところで車に乗り、母親の友人の店に寄って絢人の身体に合うサイズのエプロンを購入すると、おれたちは帰宅した。 絢人を見た母親の友人はかなり興奮した様子で、今度絢人に会いに母親の店に行くと話していた。 汗だくだったのでシャワーに入ってから母親の手伝いをし始めるおれたち。 着替えを持ってきていた絢人は、白いTシャツの上にエプロンをして母親の料理の盛り付けをしていた。 3人で進められたという事もあり、宴会の準備はいつもより早く終わって、開店前に料理の残り物を夕飯として食べる余裕があるくらいだった。 「ふたりとも、ホントありがとね、すっごく助かっちゃった。この後もよろしくね」 「母上様のお役に立てて嬉しいです」 「絢人君、兼輔の事、よろしく頼むわね」 「はい、お任せください」 「…………」 笑顔を交わすふたり。 おれは突然母親の口から出てきた言葉にこないだの事を聞かれていたんじゃないかと思うと恥ずかしくなってしまった。 宴会客が来ると、おれたちは酒や料理を運ぶのを手伝っていた。 「兄ちゃん、ハイボール2つ追加ね」 「かしこまりました。兄上様、ハイボール2つお願いします」 酒を作るのはおれがやって、絢人がそれを運んでいく。 「ママ、いい息子さんたちに恵まれたね」 「そうなのよ。ふたりとも自慢の息子なの」 「兼ちゃんも良い男だけど、絢人くんの方も良い男だね。後は良い嫁さん見つけるだけだね」 「そうね。こればっかりはね」 カウンターには昔からの常連客で母親のファンのおっさんたちが座って母親との会話を楽しんでいる。 おれと絢人は酒のお代わりが来るまでの間に空いた食器を片付けていた。 「そういやさ、こないだ親父が漁の帰りに見たって言うんだよ。白いエゾオオカミを」 「それってアレだろ?見たら死ぬって言われてるヤツだよな?親父さん大丈夫か?」 「もう歳だからボケたんじゃねーかと思ったんだけどさ、気にかけてやらねぇとって思ったよ」 洗った皿を拭いて片付けていると、そんな話が聞こえてくる。 「そういうお話になっているんですね」 と、絢人が呟くように言った。 「あぁ、この辺の人たちは神様の使いだと思ってて会えた人は天国に行けると思ってる」 「そうなんですね。俺は生きている今が一番幸せだと思います」 「……そうだな」 絢人の笑顔におれは応える。 「兼ちゃーん、ビール持ってきて」 「今行きます」 その日の宴会は何事もなく終わり、客も満足した様子で帰っていった。 絢人も明日は仕事だからと片付けを終えた後すぐに帰り(おれが送った)、明日の夜に連絡を取り合う事にしておれたちは別れた。

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