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第47話
「お、来たな」
「犬養さん、初めまして。今日はよろしくお願いいたします」
父親の所におれと絢人はおれの車で向かい、取材の人たちとは現地で合流していた。
父親がせっかくだからとおれたちと取材の人たちを船に乗せ、インタビューは全国的にも絶景として知られている場所で行われた。
「今日がいいお天気で良かったですね」
撮影の為に船のデッキに出ると、絢人が言った。
「俺が晴れ男だからな」
と、父親が得意げな様子で応える。
父親を中央にして並んで写真撮影をしたが、父親はおれたちの肩を抱いて笑顔を見せていた。
「息子さんたちは小さい頃、どんなお子さんたちだったんですか?」
「そうだなぁ、兼輔は周りを見て行動する、ガキらしくなくて落ち着いてる子だったな。絢人はそんな兼輔にくっついてまわってて、兄貴が大好きな泣き虫な子ってとこかな」
この人たちはおれたち家族の事をどこまで知っているのだろうか。
ほとんど何も知らないと思うが、もし家族の事で何か聞かれても父親みたいに当たり障りなく答えなければ。
「おふたりは小さい頃から仲良し兄弟だったんですね」
「はい、兄は小さい頃から優しくて、私が転んで足を怪我をして泣いてしまった時には家までおんぶして帰ったりしてくれましたし、宿題で分からないところは兄が分かりやすく丁寧に教えてくれました。兄の事は今でも尊敬しています」
インタビューをしている女性の言葉に絢人がすかさず応える。
おれの事を話す絢人を、その人はうっとりとした顔で見ている……ように見えた。
「兼輔さんは絢人さんの事をどう思っていらっしゃいますか?」
「……そうですね、素直で可愛い弟だと思います。学生時代、周りではよく兄弟喧嘩の話を聞きましたが、おれたちは喧嘩した事がなかったので、何で喧嘩なんてするんだろう、って思っていました」
話を振られて内心ドキッとしたが、おれは少し考えてから応える。
当たり障りはなかった筈だ。
それから仕事に対しての話や今いる場所、地元の良さをアピールするコメントを求められ、そっちは何度か同じような取材を受けていたから家族の質問よりは悩まずに応えられた。
インタビューの後、父親が連絡していたらしく、母親の店で昼食をとってから取材班の人たちと別れた。
「まなみ、急に頼んだのに美味いメシ用意してくれてサンキューな」
「ちょうど良いタイミングで新鮮なホタテが手に入ったところだったから良かったわ」
母親はホタテの刺身と味噌汁、そしてホタテ入りの炊き込みご飯を用意してくれていて、どれも美味しかった。
「しっかし、親子で取材受ける日が来るなんて思わなかったな。お互い別個に取材受けた時はあったが……」
「いい記念が出来て良かったんじゃない?っていうか晴臣、アンタちゃんと父親らしい話出来たの?」
「おう、ちゃんと可愛い息子たちの話、してきたぜ?」
な?とおれと絢人の方を見て尋ねてくる父親に、絢人が、
「はい、父上様はちゃんとお話されていたと思います!!」
と、母親に向かって笑顔で応えた。
「へぇ、アンタもやる時はやるのね」
「はははは、まぁな」
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