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第52話
絢人が思った以上に早く酔いつぶれてしまったので、おれはふたり分の会費を経営者の
奴に渡すとチームメイトにも力を借りて何とか車まで絢人を運び、絢人のアパートに向かった。
「音椰さんといるのが、兄上様を見られているのが嫌だったんです」
移動中眠ってしまった絢人。
駐車場に着いたので起こすと、こんな事を言い出した。
「試合はすごく楽しかったです。失敗出来ないという緊張感も楽しんでいたつもりでした。ですが身体は疲れていたんですね、お酒を呑んだらいつもより早く酔ってしまって……」
少しふらついた足どりの絢人を支えながら部屋に入り、とりあえず休めと絢人をベッドに寝かせた。
「申し訳ございません、兄上様……」
そう言って、絢人はすぐに寝息を立てる。
おれは経営者の奴に無事着いた事、絢人はすぐ寝たとメールを送った。
セックスの時もバレーの時も、おれ以上に動いてた絢人。
どんだけ体力あんだよって思ってたが、やはり疲れていたのか。
「…………」
初任給で買ってくれた、おれとふたりでも寝られるサイズのベッドで寝ているその顔が子供の頃と同じに見えて、愛おしさが込み上げてくる。
隣にカラダを横たえて少し赤い頬に触れているうちにおれも眠気に襲われて、そのまま夜まで眠ってしまった。
起きたら絢人が風呂と飯の用意をしてくれてて、おれは至れり尽くせり状態で甘えさせてもらった。
今日は絢人のところに泊まる事になっていたから、絢人が用意してくれたお揃いのグレーのスウェットを着て、絢人が作った飯を食べた。
「美味い」
「ありがとうございます。喜んで頂けて何よりです」
冷蔵庫の中にあったもので適当に作ったものですみません、と言いながら、野菜炒めと味噌汁を用意出来るのだけで凄いのに、味まで美味いから本当に凄いと思った。
「お腹休めたらマッサージしますね」
「あぁ……」
嫌な予感がしたが、おれは断らなかった。
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