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第54話
2週間後。
今年は桜が少し遅く咲いたお陰で祭り当日に満開宣言がされて、会場の公園には朝から大勢の人が訪れていた。
裏方仕事のおれに対し、絢人は取材を受ける事になったのもあって社長、叔父と共に来賓の接待対応など人目につきやすい仕事をする事になり、絢人にこの仕事を充てたのは叔父だった。
多くの人が来るならその中に死期が近い人がいる可能性はいつもより上がる、と考えたのだろう。
社長もいるから命を狙われるような事はないと思うが、仕事をしなければならないのに出来ない、という状況は確実に訪れそうだ。
「お疲れ様です、犬養係長」
「あぁ、お疲れ」
日中は特に大きなトラブルもなく過ぎていたが、夜になって飲酒する人が増えたらどうなるか分からない、という話を同じく見廻り担当になっていた後輩の男性社員と話している時だった。
「持ち場変わります。飲み物持ってきたのでふたりとも向こうで少し休んできて下さい」
後輩社員より更に若い男性社員がふたり現れて、おれたちに少し休憩するよう声をかけてくる。
ひとりの社員の手にはお茶の入ったペットボトルが2本あって、それをおれたちに渡してきた。
「あぁ、悪いな」
「サンキュー、喉乾いてたから助かった」
おれたちはペットボトルを手にすると、近くにある休憩所に向かった。
「あと少しですね」
「そうだな」
会社の名前が入った少し大きめのテント。
そこにはおれたちしかいなかった。
ペットボトルの蓋を開け、乾いていた喉をお茶で潤す。
「んはぁーッ、生き返るぅ」
おれの隣に腰を下ろした後輩は余程喉が乾いていたのか、ほぼ完飲していた。
おれは半分くらいを飲んだが、少しすると後輩の様子がおかしくなっていった。
「あぁ、なんかスゲームラムラしてきた」
「ちょ……っ、いきなり何すんだ!?」
突然、後輩がおれをその場に押し倒してくる。
「前から思ってたんすけど、犬養係長って男なのに変な色気ありますよね。色白で美人顔だし口元のホクロとかスゲーやらしいし……」
「や、止めろ、離せ!!!」
正気の沙汰じゃない。
そう思っていたら、おれのカラダも熱くなっていって、おかしくなっていった。
「や……あッ、、、」
「めっちゃエロい顔してますよ?今」
「ンンッ、やめろ……ッ、、、」
絢人じゃないのに、耳や首筋を舐められて気持ち良いって思っちまってる。
何故だ。
何故このタイミングでおれのカラダは発情してしまったんだ。
組み敷かれてネクタイとワイシャツのボタンを外されると、為す術なく胸をまさぐられた。
「あぁ、、、ッ、、、」
「気持ち良い、って言ってくれたらもっと良くしてあげますよ?犬養係長」
乳首に触れる寸前で指を止められ、背筋がゾクゾクしていた。
あぁ、この状態で触られたらおれ、イクかもしれない。
そう思っていたら、突然視界から後輩が消えた。
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