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第57話

シャワーに入った後、ホテルには音椰の車で来た事が分かった。 おれは音椰と定食屋で飯を食べ、昨日車を停めた所まで送ってもらった。 それから帰宅してスマホを見たら、絢人からの不在着信が何件も記録されていた。 「兄上様!!!」 電話すると、絢人はすぐに出て、今すぐ参ります、と言って電話を切り、本当にすぐにおれの家に来た。 部屋でふたりきりになると、絢人はおれに抱きついてくる。 「あぁ、兄上様、やっとお会い出来ました」 「大袈裟だな」 今にも泣き出しそうな顔をして、おれをきつく抱き締める絢人。 「昨夜、仕事が終わったので連絡したのですが全く繋がりませんでしたので、心配で心配で眠れませんでした。ようやく繋がったと思ったら、音椰さんが出たので俺……」 走ってきたのか、流れる汗と堪えられなかったと思われる涙がおれの顔を伝う。 「俺が傍にいられなかったから、音椰さんは兄上様を連れて行って、想いを遂げようとされたのではないかと思って……」 まさか、と言おうとしたら、絢人がキスしてきて唇を塞がれる。 「うぅ……ッ……」 そのまま床に倒されて、咥内に舌を突っ込まれて、その心地良さを求めてしまった。 「……お酒を飲まれたのは本当みたいですね……」 「ひ……ッん、、、」 契約の証を甘噛みされて、背筋がびりっとする。 「兄上様の匂い……とても落ち着きます……」 そう言って絢人はおれを抱き締めながら眠ってしまった。 「…………」 ガキの頃にしたように、涙の跡を手で拭い、頭を撫でる。 『帰って手当てしてやるからもう泣くな』 『はい、あにうえさま……』 外で一緒に遊んでいるうちに転んで膝から流血してしまって大泣きした絢人の姿を思い出していると、部屋の扉をノックする音がした。

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