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第61話

「乾杯!!」 金曜に有給を取り、その日のうちに引越を終えると、夜はスーパーで奮発して買ったステーキとふたりで作ったサラダ、絢人が取引先からもらったワインで夕食兼晩酌の時を迎えていた。 「おれ、一杯でいい。明日バレーあるから」 「では、俺もこれだけにします」 「お前は気にせず飲めばいいだろ」 「兄上様と同じがいいです」 ガキみたいな事言うんじゃねぇよ、と言うと、絢人は兄上様と同じに出来る事は同じにしたいんですと返してきた。 「お前な……」 ガキの頃もこんな事あったような気がして、おれは呆れつつも可笑しくて笑ってしまう。 食後は一緒に皿を洗い片付けて、おれが風呂の準備をして、いつもの様に別々に風呂に入った。 風呂上がり。 絢人がやりたいと言うので、おれは髪をドライヤーで乾かしてもらっていた。 「兄上様の髪、さらさらで触り心地が良いです」 「猫っ毛だからだろ」 乾かしてもらったから、おれも絢人にやり返す。 おれの髪よりは少し硬めで焦茶色をした髪だが、触り心地は良かった。 「もう少し暖かくなったら兄上様と一緒にお風呂に入りたいです」 「絶対狭いだろ。てかあの風呂におれたちふたり入るとは思えねぇんだけど」 「一度試してみたいです」 「お前、自分のカラダのデカさあんまり分かってねぇだろ」 ガキの頃は一緒に入っていたが、それは絢人がおれより小さかった時の話で。 おれがひとりで入るのにちょうどいいくらいの風呂におれよりデカい絢人も入ってくるなんて有り得ないと思ってしまった。 「……兄上様は俺のカラダ、お嫌いですか?」 ドライヤーをしまっていると、絢人に背後から抱きつかれる。 「……嫌いだったら何回もセックスしてねぇから……」 恥ずかしい気持ちになったがおれは言った。 「兄上様……お耳が赤くなられてます……」 お可愛いらしい、と言って音を立てて耳にキスをしてくる絢人。 「や……っ、、、」 そのまま首筋を舌で舐められると、背筋に電気が走ったみたいになって足元がぐらついてしまう。 「普段の前髪を上げられた兄上様も色っぽくて素敵ですが、こうして髪を下ろされた兄上様もお可愛いらしくて素敵です……」 そんなおれのカラダを支えながら、絢人は首筋に跡をつけてくる。 「お……ッ、おい、もうそこに跡つけるのやめろって……」 「……いいじゃないですか、俺、嫉妬深い恋人なので」 ワイシャツを着たら辛うじて隠れるがTシャツだとはっきり見えるところ。 バレーの度にからかわれ、恥ずかしいのに絢人はそんなおれを見ると嬉しくなると言い出した。 「音椰さんに見せつけたいんです。兄上様は誰のものなのかって」 「……っあ…ッ……!!」 着ているスウェットを中のシャツと一緒に捲られると、絢人の指がおれの乳首に触れる。 「お前…ッ、そういうとこ、タチ悪いだろ……あぁ……ッ……!!!」 「兄上様が妖艶でおられるからいけないんです……」 「く……うぅ……ッ、、、」 自分では殆ど触らない胸を絢人に触られて、女みたいに感じてしまう。 このカラダのせいだと思うが、恥ずかしかった。 「綺麗なお顔に素敵なお声、兄上様の美しさに惹かれない人なんていないと思いますが、兄上様と淫らな事をしていいのは、兄上様のお可愛らしい姿とお声を見聞きしていいのは俺だけです」 「ひぁっ!!!」 両乳首を摘まれると、目の前を火花みたいなとのが通り過ぎる。 そのまま扱くように弄られると、耳を塞ぎたくなるような変な声が出て止まらなくなった。 「兄上様、こちらだけでイけそうではありませんか?」 「や……あぁッ、嫌だ、そんなの……うぁッ、、、」 逃げようと藻掻くと、背後に興奮しきっている絢人のそれが尻の辺りに触れた。 「お、おれだけ良くなるの、いやだ……っ、、、」 一緒がいい、と言うと、おれは絢人のソレに尻を擦り付けるようにカラダを動かす。 「……兄上様……」 大きく息を吐くと、絢人はベッドに行きましょうと言っておれの手に指を絡めてきた。 「明日、バレーですのでなるべく手短にしたいところなのですが、兄上様がお可愛らしい事を仰ったのでお約束出来ません」 よく分からない事を言った絢人とその後、日をまたいでセックスして、引越しの疲れもあったのかふたりして寝坊して、バレーには少し遅れて参加した。

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