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第66話

「霧島さん、コピーしてきました……」 そこに絢人が来てしまい、おれは奴の掴んでいた手を離そうとしたが手遅れだった。 「……兄上様、一体何故霧島さんの手を掴んでおられるのですか……?」 「これは……その、こいつがおれのズボンにゴミがついてるとか言い出したから自分で取るって言って断ろうとして……」 怒りを必死で抑えている声。 おれはここで本当の事を話しては絢人と同期との関係が悪くなり、それは今後の為にも良くないと思ったから咄嗟に苦し紛れの嘘をついた。 「そ、そう、こいつケツにゴミつけて歩いてきたなんてカッコ悪いだろって思ってさ」 同期も絢人を怒らせたらヤバいと思ったのか、おれの嘘に乗ってくれる。 「……そうでしたか、申し訳ございません、霧島さんが兄上様に何か嫌な事をされたのかと思ってしまいました……」 「もーお前ホントブラコン過ぎ」 こうしてその場は事なきを得たのだが、それから先におれを待ち受けていたのは絢人からのとんでもない制裁だった。

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