71 / 97

第71話

絢人との週7セックスにもだいぶ慣れてきた頃、父親が次のお盆の際に絢人を正式に跡取りとして一族に承認してもらう儀式、継承の儀をしたいと言い出した。 「俺、一族の生まれで跡継ぎなのに好き勝手生きちまったが、跡継ぎとしての務めは必ず果たすって決めてたんだよ。だからお前らに絆結の儀を結ばせたんだが、これにはな、結ばせた者……つまり俺に7年以内に死ぬっていう呪いみてぇもんがかかるんだ……」 夜でも暑くなりつつあった日の夜。 おれたちを呼び出した父親は船におれたちを乗せ、絆結の儀を行った鳥居の近くまで連れてくるとこう話した。 「7年?父上様、7年などとっくに過ぎていますよ?呪いなど存在しないのでは……」 「いーや、呪いは存在する。何故なら俺がもうすぐ死ぬからだ」 「!!!」 父親の言葉に、おれも絢人も言葉が出てこなかった。 「父上様、ご冗談を……」 ようやく絢人が口を開いたが、瞬間、父親の姿に血だらけの白いエゾオオカミの姿がほんの刹那重なって見えた。 「見えただろ?兼輔、絢人、俺はもう長くねぇ。だから最期に継承の儀をちゃんとしてからお前らに送って欲しいんだ」 そう言って、父親はおれたちを抱き締める。 「出来るよな、お前ら」 「…………」 その腕は震えていた。 「……父上様、ご心配には及びません。俺たちは自分たちの仕事をするだけですから。たとえそれが父上様だったとしても、必ず務めを果たします」 そんな父親に、絢人が穏やかな口調で言った。 「そうか、それなら安心だ」 「…………」 おれは何も言えなかった。 正確に言えば何を言えばいいか分からなかった。 自由奔放に生きてきた中で出来たおれたち兄弟には自分が無視してきた家のしきたり通りに生きるように仕向け、その代償に自分は早く死ぬ呪いを受けてその後始末をおれたち……絢人に背負わせるなんて。 身勝手過ぎると思う反面、父親がおれたちを結びつけてくれたから今、おれが幸せだと思う日々がある。 それに、父親と過ごした日々だっておれにとっては良い思い出ばかりで、父親を嫌ったり憎んだりした事などなかった。 この行き場のない感情は、一体どう飲み込めばいいのだろう。

ともだちにシェアしよう!