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第75話

それから一週間が過ぎ、おれたちは継承の儀を行う為、父親と共に犬養家の本家に向かった。 成人した際に本家から贈られた家紋の入った紋付袴を母親に着せてもらったのだが、絢人は背も体格もあるからすごくよく似合っているのに、おれは肌は白いし背丈もそんなにないから全然似合ってなかった。 「まなみ、最期に4人で写真撮ろうぜ」 出かける前、父親がこう言い出し、母親のスマホで家族写真を撮った。 「この写真、店に飾ってくれよ」 「はいはい、分かりました」 母親の元に生きて帰るのはおれたちだけ。 だが、そんな悲しい現実が来るとは思えないくらい、両親は笑顔で会話していた。 「じゃ、元気でな」 「アンタ、ちゃんと天国に行きなさいよ」 「大丈夫だ、こいつらが導いてくれるから」 そう言って父親は車に乗り、おれたちが後部座席に座ると車を走らせた。 本家は町の外れにあり、一部が公園として利用されている周囲の広大な森林も本家の土地だった。 おれにとっては初めて訪れる地で、薄暗く感じるそこは少し不気味に感じた。

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