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第77話

「兄さまと同じ、美しい顔に艶やかな髪と滑らかな肌。50年に一度の逸材の特徴の全てをお持ちですね」 「……ありがとうございます……」 兄さまと同じ。 この人の兄も、おれと同じカラダという事か。 「貴方が兄さまと同じで良かったです。晴臣さんに関わる女にはまともなのがおりませんでしたから」 と、男はおれに笑みを浮かべながら言った。 父親にも絢人にも、そして、この場にいた全員にも聞こえるくらいの声量だった。 家に入る事を拒んだ女と途中で離脱した女。 この人にとって、おれと絢人の母親は認められない存在なのだと思った。 報告を終えると、夜に同じ場所で会食をする事になっているという事でおれたちは一度部屋に戻った。 「はー、スゲー疲れた」 父親が窓を開け、煙草を吸い始めた様だ。 「お前らもお疲れ」 父親は恐らく笑っていると思うが、おれの目には傷だらけで血まみれの狼にしか見えなかった。 「父上様、あの方にとって我々は本来、招かれざる客だったのではありませんか?」 「まぁ、そうかもしれねぇが俺たちの力があるからあんなデカい顔していられるんだよ、あいつらは」 「俺は、母上様を侮辱された事が許せませんでした。まともじゃないだなんて、母上様に失礼です」 絢人はおれと同じ姿の父親を見ているのに、今までと変わりなく話をしている。 「俺らとは違う感覚で生きてるからな、本家の連中の殆どは」 父親の話から、おれに近くまで来るよう言った人は本家の現当主で、父親から見て大叔父に当たる人物という事が分かった。 「お前らも距離を置いて付き合った方がいい。子供が産まれたら尚更だ」 「はい、承知致しました」 「ま、最悪あの世に送っちまえばいいから」 と、父親は笑いながら話した。 こうして話せるのもあと少し。 だからと言って会話する事が元々そんなに得意ではないおれは、父親と絢人との話を聞いてたまに言葉を返すのを繰り返していた。

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