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第84話

『兄上様……』 「…………」 擦り寄ってきた絢人を、おれは抱き締める。 叔父も、音椰も、父親も。 みんな死んでしまった。 音椰に関してはおれのせいだ。 あいつを狂わせたのは、おれなんだ。 『兄上様が心を痛める必要はありません』 おれの心の声が聞こえたのか、絢人はそう言って、鼻頭をおれの顔に押し付けてきた。 「……っ、、、」 顔を舐められると、カラダがかぁっと熱くなる。 「ん、うぅっ、んン……」 絢人が獣から人へ戻っていく時に交わすキスは、いつも興奮してしまってどうしようもない。 そんなおれを、絢人は可愛いとか愛おしいとか言ってくれて、恥ずかしいが嬉しかった。 「兄上様……こぼれ落ちそうなくらい大きくて宝石みたいに輝く瞳がとても美しいです……」 「ぁ、あぁ……ッ……」 カラダ中を這う舌は次第に短くなっていくものの、おれに快感を与え続ける。 「絢人、あやと、も、苦しい……」 「……俺もです、兄上様……」 おれたちは、普通じゃない。 結婚する事になっているとはいえ、異母兄弟なのに。 身内が目の前で次々と死んでしまったというのに。 それでも、お互いの熱をカラダが欲して止められない。 「く……ッ、うぁッ、あ"あ"っ!!!」 愛しい。 もっと、もっと愛して欲しい。 こうしてずっとおれとカラダを繋いでいて欲しい。 絢人の吐息と鼓動を聞きながら、おれは繋いでくれている手に指を絡めてぎゅっと握った。 「あにうえさま……」 愛しております。 そう言って手を握り返してくる絢人に、 「おれも」 と言って、キスをした……。

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