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第85話

その後、おれたちがいた部屋……本家の離れでほとんど使われていない納戸に本家の人間がひとり入ってきた。 当主が寄越したという使いの男は、おれたちを風呂に案内してくれて、ぼろぼろになってしまった着物の代わりにと新しい着物まで着せてくれた。 「あなたがたのお陰で良からぬ考えを持つ者たちを排除する事が出来たと当主様は大変喜ばれております」 男は、当主の中では叔父の考え方が前々から一族の存在を否定するような危険思想とみなされていたと話した。 「犬飼誠二は子息とあなたがたの父親に反感を持つ人間を取り込み、あなたがた家族を排除して子息に跡を継がせようとしていました。我々にとってあなたがたは犬養の家の為に欠けてはならない大切な存在。当主様はいかに反乱分子を壊滅する事が出来るかと苦悩されておられました」 男が言うには、叔父が継承の儀の際におれたち家族を襲う計画を立てていた事を知った当主は父親の事は救えないものの、おれたちに万が一の事があったら助けるつもりでいたとの事だった。 「あなたがたがご無事で本当に良かった。継承の儀は明朝、予定通り行います。今夜は明朝に備えゆっくりお休み下さい」 そう言って、男はおれたちが泊まる部屋から出ていった。

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