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第87話

翌朝は陽が登る前に起こされ、儀式の為にかつて父親と訪れた場所……絆結の儀を行ったのと同じ場所に向かった。 父親の代わりは会った事もなかった父親のいとこという人物が務め、絢人は正式に父親の跡継ぎになった。 継承の儀を無事に終えたおれたちは本家に戻り、当主にその事を伝えた。 「この度の事、ご苦労様でした。ささやかですが、私から貴方たちにお祝いを差し上げます」 そう言って、当主はおれたちに黒い高そうな箱からふたつの黒い指輪を出すと、おれと絢人の左手の薬指に嵌めた。 「一族が代々子孫繁栄を願い、絆結の儀を行ったふたりに身につけさせた指輪です」 指に入れられた時は少し緩かった指輪。 だが、指の根元まで入ると丁度いいサイズになった。 「どうか、若いうちにたくさんの子を残して下さい。貴方がたおふたりの優秀なチカラを受け継いだ子供をひとりでも多く見られる事を楽しみにしております」 「……子供は私たちとその子が望んだタイミングでやって来ると思いますので、ご期待に応えられるか分かりません……」 当主の言葉に、絢人がこう返した。 「私たちは私たちの歩幅で生きて参りますので、御理解頂けると有難いです」 浮かべた笑みは心から笑っているものではなく、当主を威圧しているようにも見えた。

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