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第90話

それからのおれたちの生活は目まぐるしく変わっていった。 ふたりで死神としての仕事をしながら、職場では叔父と音椰が死んだ事で後任を決めるのに少し時間がかかり、おれは一時的に不動産部門で働いたりもした。 それとほぼ同時期に絢人が父親の仕事をやりたいと言い出し、その調整をしながら合間に『突然他界した父の後を次いだイケメン船長』なんていうタイトルのドキュメンタリー番組の取材をおれまで受ける羽目になったり、テレビを観て父親の死を知ったという父親の元恋人と名乗る見知らぬ女たちが父親の墓参りをしたいと本社に電話してきたり。 そうこうしているうちに母親が体調を崩し短期間ではあるが入院したので、おれたちは時間を作って見舞いに行きつつ父親が遺してくれた遺産で母親の家から徒歩圏内にある空地を買い、将来的には母親も一緒に暮らせるような家を建てた。 社内では指輪を付け始めた当初、おれと絢人がお揃いの結婚指輪をしている事が話題になったが、一族の結婚指輪はこのデザインと決まっているという話を親族が流してくれたお陰でおれたちがそれぞれ結婚したという事になり、それはそれで女性社員たちが騒いでいたが真相には辿り着けないようになっていた。

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