91 / 97

第91話

「乾杯!!!」 色々な事が起こったが、おれたちはたまに欠席しながらもバレーボールを続けていた。 今日は市町4チームが集まった試合があり、総当たり戦で初めて全勝出来た。 「おつかれ〜」 「絢ちん今日も凄かったわ」 「その髪型になってから無敵じゃね?」 「ありがとうございます!髪型は関係ないと思いますがチームの勝利に貢献出来て嬉しいです!!」 船長になってからの絢人は帽子を着脱しやすいからと髪を坊主にして、一日中ほとんど外にいる影響で肌の色も少し浅黒くなり、父親に似てきたように見えた。 「それに対してお前は真っ白だな〜」 「てかお前痩せた?腰めっちゃ括れてね?」 「……気のせいだろ」 と言ったが、自覚はあった。 ベルトを締める穴がひとつ縮まっていたからだ。 なのに下半身はそのままだから、絢人がおれのカラダがいやらしすぎる、社内で襲われないか心配だと毎日言うようになった。 「あの嫉妬深い子が奥さんになって毎日励んでるから痩せたんじゃね?」 からかわれるおれの隣には絢人がいる。 相変わらずおれのカラダにマーキングする事を忘れなくて、今日もTシャツだからそれらの一部……首筋につけた跡が誰の目にも明らかになっていた。 「兄上様が幸せそうで俺も嬉しいです」 「絢ちんだって新婚でしょ?毎日幸せなんじゃない?」 「ええ、最愛の方と毎日一緒にいられてとても幸せです」 チームメイトに笑顔で返す絢人。 誰もおれたちが結婚して一緒に暮らしているなんて思わないだろう。 田舎で行く場所が限られているから一緒にいる所を結構目撃されているが、母親も一緒にいたりして仲の良い兄弟って事で済んでいる様だし。 「お前ら、そんなの新婚の時だけだからな。子供が出来たら女は変わるぞ?」 「そうそう、子供が産まれたら女はそっちしか見えなくなってお前らの事は二の次三の次になるだろうな」 「……そうなんですね」 チームメイトの話を、絢人は終始ニコニコしながら聞いていた。

ともだちにシェアしよう!