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第7話 理事室

「あっという間に、フレムはロキに惚れたわね。」 理事室のソファにラムズとターニャが座っている。 「リュウレイは影響が少なそうだから、3人一緒なら大丈夫だと思うけど…。」 ターニャは紅茶をすすった。 研究所から戻ったラムズが口を開く。 「研究所の結果としては、女人化は完了しているそうです。今日の実戦演習の様子をみると、試合形式ならロキ一人でもパラサイトバットには勝てるでしょう。まあ、そんな理想的な戦闘にはならないでしょうが。」 ラムズは、今までのロキの戦闘データをターニャに見せた。 「ロキは別に弱くないのです。剣の基礎力はパーフェクト。射撃も学園一。プロテクトに至っては特殊警備隊員並みの精度です。特に、地味な訓練が必要な『真眼』のレベルが高いので、あの一撃必殺は貴重です。」 「おっしゃりたいことはわかりますが…。やっぱり異能が無いと、レベルの高いクリーチャーには敵わないのではないでしょうか?」 「異能があると大技が出せるのはその通りです。ただ、その異能を強化するためにも、ベースとなる『真眼』の訓練が必要です。ロキのひたむきな努力は評価に値します。」 武闘の神シャクダイ信仰がある姜王国育ちで、実戦豊富なラムズが言うのだから、そうなんだろう。 と、ターニャは思いつつ、異能が無いことに引け目を感じているロキを可哀想とも思っていた。 「ロキの異能開発に対して、ラムズ理事はどのようにお考えですか?」 「異能は遺伝と前世が大きく関わります。遺伝については家系調査や遺伝子解析をしましたが、特に強いものはありませんでした。そうなると前世ですが、前世を無理矢理思い出させるのは危険だと考えています。タイミングを誤れば、前世に縛られた今世を生きることになりますから。」 ターニャも、前世に対するラムズの考え方には賛成だった。 「待つしかないのですね。」 「私も、今までとは違った接し方をしてみます。」 「ちなみに…前世で、ラムズ理事とロキは関わっているとお考えですか?大分、親しげに見えるので…。」 「前世に対しては、あまり先入観を持たないようにしています。ロキは、私にとって大切な生徒の一人ですよ。」 ラムズが生徒想いなことに異論はないが「ロキのことはあからさまに好きだろ!」と、心の中でツッコんだ。 が、それは言わなかった。 「フレムがそのままロキを好きになったら、どうしましょう?一線超えないようには見張りますが…。」 ちょっと意地悪な質問をしてみた。 「……そこはロキの気持ちもあるので、男に戻ったあとは本人達次第かと。」 意外と寛容なんだな、とターニャは思った。 「ただ、異能開発のためにあらゆる可能性を探したいので、いっそこのまま一緒に住み続けた方がいいのでは、と考えています。」 え?なんだって? 「私も姜王国にいた少年期は、主のリィ・ウェン様と生活を共にし、指導を受け、腕を磨きました。やはりロキにはそこまでしないと。」 理屈はわかるが、本当に下心無しで言ってるんだろうか? この流れで同棲なんて、天然なの?狡猾なの?   ロキに神のご加護があらんことを…。 ターニャは祈らずにはいられなかった。

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