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第17話 ひだまりの小屋
ウェンはラムズを『ひだまりの小屋』に連れて来た。
「今日からここがお前の家だよ。通称ひだまりの小屋。この地域は、陽の光がよく降り注いでるからそう言われてるんだ。元々は、父が別荘で使っていたんだ。」
ラムズはウェンの後をちょこちょこと付いてきた。
玄関を入るとリビングになっていて、両脇にふた部屋ずつあり、奥に台所やトイレがある。
小屋とはいうが、そこそこ立派だ。
一通り屋内を案内して、外に出る。
「父は、定期的にここにきて、修行したり休養をとっていたんだ。街から離れてるし、自然に囲まれていて最適なんだ。俺も本当に小さい頃は、ここに来て修行した。」
木々がちょうど良く陰を作り涼しいが、木洩れ日もあって意外と明るい。
小屋の裏にはちょっとした畑がある。
近くには小川もあるし、それを辿れば滝もある。
開けた草地では、父や兄たちと手合わせをした。
ひだまりの小屋は、自分に向き合い、自分を高める場だった。
♢♢♢
ここで、ラムズと2人で暮らすつもりだった。
ウェンには血の繋がった家族はもういなかった。
偉大な父は数年前に亡くなり、病弱な母も後を追うように他界した。
兄は二人いたが、どちらも戦死していた。
すぐ近くには隊員の訓練所があり、寮もついている。
他の隊員は全員そこで共同生活をしていた。
父フェイオンは隊員を採用する際、孤児を優先した。
この戦闘部隊は第二の家族。
仲間と生き、祖国のために戦う。
そんな自分の人生に、誇りを持ってほしかったらしい。
本来、隊長の自分もそこで暮らさなくてはいけない。
だが、アシュラスの遺伝子をもつラムズにはまだ油断がならないと思い、隔離する目的でひだまりの小屋に住むことにした。
ただ、それは建前で、本音は部隊から距離を置きたかったのだ。
隊員の半分はフェイオンから引き継いだ。
フェイオンが逝去して、ウェンが部隊長になったが、部隊長をつとめるには若く、部隊を率いるのに大分苦労した。
さらに今回、大帝国第一部隊になってから、大帝国の武器が支給された。
レーザーソードにレーザーガン。
今までは、苦労して修行し、気を練り、刀剣で技を出していた。
が、大帝国の武器を使えば、わずかな魔力を込めるだけでそこそこの攻撃ができてしまう。
隊員たちがもの珍しそうに武器を取り、遊ぶように訓練しているのを見ると、これまでの修行はなんだったんだろう……と虚しくなってしまった。
自信を失った。
というか、最初から自信などなかった。
『姜王国の父』と謳われたフェイオンには遠く及ばず、戦死した兄二人にも追いつかない。
--部下が可哀想だろ--
アシュラスの言葉がこだまして、胸を締め付けた。
♢♢♢
一通り案内して回ると、夜になっていた。
ウェンとラムズは一緒に台所に立った。
「ラムズ、料理をしたことはあるかい?」
ラムズは首を横に振る。
「俺は、父も上の兄たちも戦士で、家にいないことが多かったんだ。母は病気がちだったから、よく俺が料理をしていたんだよ」
包丁の使い方や食材の栄養について、教えながら料理をしていく。
ラムズは器用で、教えたことはサッサとできた。
一緒にごはんを食べる。
もちろんラムズは話さないのでウェンが一方的にしゃべっているだけだ。
だが、ウェンは自分がとても落ち着いていることに気づいた。
最近、こんなに誰かと話したことがなかった。
いつも考え込み、自分が正しいかどうか自信がなくて誰かと気軽に話すことができていなかった。
ラムズは、話を聞くとき、ちゃんと人の目を見る。
瞬きやうなずきで意思表示もできる。
物言わぬ子どもに癒されていた。
ウェンは久々に楽しさを感じていた。
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