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第18話 アシュラスの息子ドレイク

「苦労かけるね、ドレイク」 「いえ、お気遣いなく。おかげさまで、トト副隊長を始めとする隊員の皆さんにはよくしてもらっています」 ウェンはドレイクを小屋に呼び出していた。 ドレイクは、副隊長のトトに次ぐナンバー2として働いてもらうことにした。 ドレイクは仕事ができ、礼儀正しいので他の隊員ともうまくやっているようだった。 ウェンはドレイクにコーヒーを出した。 お礼を言って、ドレイクはコーヒーを口にする。 「ドレイクは、アシュラスのことをどう思ってるんだ?お母さんのこともあるなら、彼の元にいるのは辛かったんじゃない?」 ドレイクがアシュラスのスパイかもしれないことは承知していたが、今のウェンには細かなことまで考える気力がなかったので、本当に聞きたかったことを聞いた。 「伯父の不審な動きには私も気づいていました。伯父はアシュラスを舐めていました。伯父にも母にも、私から忠告していたんですが、結果はご承知の通りで……。残念ですが、あの飛ぶ鳥を落とす勢いの帝王に背くというのはそういうことです。今やアシュラスを簡単に止める方法などありません」 間近でみているドレイクがそう言うのだ。 きっとそうなのだろう。 「アシュラスは残虐なところがありますが、同時にカリスマ性もあり、支持者とアンチは半々なのです」 「侵略者を支持するなんて、よっぽど価値観が似た強者同士なんだろうな」 「いえ、そうでもありません。彼にはティスというブレーンがいて、支配地に新たな産業を起こしたり、都市開発をして経済を回すんです。さらにアシュラスが軍事的な援助をするので、支配された国や星がいきなり経済成長したり、教育が行き届いたり、治安が良くなったりするんですね。だから、現地民からありがたられていることもあるのです」 「そんなことが……。安定した姜王国の中にいて、他国の詳細は知らなかったよ」 「そういう背景がありますから、単純に戦争を仕掛けてアシュラスを倒せば終わり、とはならないでしょう」 アシュラスの攻略は一筋縄ではいかなそうだ。 「ところでウェン様、お体に変わりはありませんか?」 「いや、特には」 「『血の契約』をすると、アシュラスに歯向かうことなど出来なくなるのですが……。先日の玉座の間ではアシュラスに意見していたので、どうして効いていないのかな、と。」 「はあ、そうなのか。そもそも『血の契約』とは、なんなんだ?」 「アシュラスが侵略に行った際、気に入った人を直属にするための支配魔術です。今契約を受けた戦士や魔導師は7名いて、親衛隊と呼ばれています。どんなに敵対し、憎み、瀕死にまで追いやられた相手であっても、契約を結べばあっという間にアシュラスの虜になってしまうのです。何でもいうことは聞きますし、アシュラスのために命も投げ出すでしょう」 「ゾッとするな……。あんな暴君に仕えるなんて……」 ウェンはアシュラスの不敵な笑みや発言の異常さを思い出して身震いした。 「仕えるなんて、かわいいものではなく、いわばハーレムです」 「ハーレム……?」 「イチャラブしてます。」 「イチャラブ……?」 「逆に、あの日玉座の間に親衛隊がいなかったほうが驚きでした。だから、てっきりウェン様とイチャラブする気なんだな、と思ってました」 ウェンはドレイクの言っている意味を理解しようとしたが、想像がつかなかった。 「あんな下衆と関係をもつなんて絶対に嫌なんだが、契約を解除する方法はないのか?」 「さすがにそれは私もわかりません……。ただ、ウェン様が気に入られたことは事実ですので、何かにつけて絡まれるかと思います」 「絡まれるのか……」 「きっと執拗に」 「それは面倒だな」 「宇宙規模でも個人レベルでも災厄なんです。じきにわかりますよ」 本当に迷惑な奴だと思った。

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