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第23話 部隊の再集結

スタジアムに行く前に、一年ぶりに隊員達と顔を合わせた。 お互い、気まずい表情だ。 「みんな、長らく留守にしてすまない。トトとドレイクには本当に世話になった。正直にいうと、恥ずかしながら、アシュラスに敗北してから心が折れてしまったのだ……」 ウェンは、馬鹿正直な男だった。 計算や計略ができない。 そんな頼りない自分が嫌だったし、部隊長として力不足なことを悩んでいた。 ラムズと暮らし始めて一年。 自然と共に生き、聖典を読み返して、ウェンは「立派な隊長になろうとすること」を辞める決意をした。 「もう一度、一人の戦士としてやり直したいんだ。これまで、俺は部隊長の責任ばかり気にしていた。それも大事なことなんだが、何のために戦うのかを改めて考えたら、愛する人や故郷を守るためなんだ。俺の剣技や鬼切丸は、そのためでありたい。みんなに迷惑をかけたことを許してもらえるとは思わないが、またみんなと一緒に戦いたいと思っている。俺に、また力を貸してくれないだろうか」 ウェンは、隊員たちに頭を下げた。 「ウェン隊長、頭を上げてください! 俺たちはそんなことをしてほしいわけじゃないんです!」 副隊長のトトが言った。 「フェイオン様が亡くなってから、確かに不安はありました。でも、努力家で私たちと同じように家族を無くしたウェン様が隊長になると聞いて、みんなでウェン様を支えようと誓いました。私たちを、この国の戦士として一人前に育ててくれたフェイオン様に、今こそ恩返しするときだと思っているんです」 隊員たちがそんな風に考えてくれているなんて知らなかった。 若くて未熟な自分を、頼りないと思っていると思い込んでいた。 「俺たちこそ、隊長の力になれず申し訳ございませんでした。どうか、何もかもを一人で背負うのはおやめください。これからは、俺たちの第二の家族のウェン様としていてください。こうして再会できて、俺たちは本当に嬉しいです」 「みんな……ありがとう……」 隊員の中には泣いている者もいた。 本当に、いい隊員たちに恵まれた。 「まだちゃんと紹介できてなかったが、こちらがアシュラスの息子、ラムズだ。私が引き取り育てている。今は聖典を元に剣技を学び始めたばかりだ。隊員ではないが、必ず戦力になる。よろしく頼む」 ラムズは礼儀正しくお辞儀をした。 隊員たちもそれに応える。 「……先日、アシュラス様が親善試合の告知に直々に訓練所にきました。」 「そうなのか?!」 実はあいつ、暇なんじゃないだろうか。 「アシュラス様曰く『ウェンは修行もせず愛人と仲良く暮らしているからお前たちは見捨てられたんだ』と言いふらしていました。まさか、そのラムズのことじゃないですよね?」 随分細かくネガティブキャンペーンをしているようだ。 「一時は剣を休んでいたが、今は私なりに新たな修行をしているよ」 「ドレイクから話は聞いていたので、アシュラス様の話は信じてはいなかったのですが、実際ラムズを見ると、思っていたより美少年でしたから本当かと思いましたよ。」 「まさか。そんなことするわけないだろう」 ウェンは笑った。 「では、ラムズ、改めてよろしく」 トトはラムズに手を差し出して、握手をした。 ラムズはまっすぐにトトを見つめていた。 「では、スタジアムに向かいましょう。久々に、全員で」 「ああ」 隊員たちの笑顔で、心が軽くなったのは明らかだった。 アシュラスの企画とはいえ、みんなと会えて本当に良かったとウェンは思った。

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