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第25話 ラムズの試合
第二部隊は同じく長剣を構えたが、今度は各ポジションから技を放ってくる。
ラムズは技をかわしながら、間合いを詰めていった。
『ラムズ戦士、かなり目がいいですね! 無駄のない動き! 技が出るタイミング、軌道を完全に見切ってます!』
「遺伝子が優秀だからな」
ラムズは1対1に持ち込むと、一撃で簡単に相手を倒した。
1人ずつ、確実に仕留めている。
『どういうことですか?! 第二部隊、早くも鋭くもないラムズ戦士の斬り込みに抵抗できず、倒れていきます! アシュラス様、解説を!』
「半人半機はラムズと相性が悪いらしい。ラムズは闘気がなさすぎて、半人半機からはラムズの動きを感知することができない。逆にラムズからは、半人半機の構造や動きが丸見えで、無駄なく一撃必殺している」
ラムズは、9人をあっという間に倒した。
「ウェン様、ラムズは本当におそろしいくらい強いですね……」
ドレイクは唸って言った。
「ああ、あの佇まい、聖典の理想とする姿だ。自然と一体になり、調和の一つになる。ラムズがやったことは、倒すでも殺すでもなく、半人半機を肉と機械に切り離した。それだけだ……」
♢♢♢
『さあ! いよいよ、大将との一騎打ちです! ゾウは他の9人とは別格の強さ! 果たして……!』
大将のゾウは神速雷撃の構えをとった。
するとラムズも同じ構えを見せた。
一瞬、会場の時が止まったように感じた。
そして、スタジアムが震えるほどの雷鳴が響いた。
ゾウが、アシュラスがいる特別席に吹き飛ばされる。
アシュラスはプロテクトを張り、飛んできたゾウを弾き飛ばした。
ゾウは人形のようにフィールドに落ちた。
審判が駆け寄り、戦闘不能の判定が出る。
会場にはざわめきが起こった。
『ええと! 勝者! ラムズ戦士! 大将のゾウ、かなり重傷です! そのダメージはアシュラス様のプロテクトとの接触が9割な気がしますが、ルールはルール! ラムズ戦士、10人斬りを果たしました!』
実況は場を盛り上げようとしているが、観客の気になるところはそこではなかった。
アシュラスから殺意混じりの闘気が放たれているのだ。
察しのよい観客はスタジアムから避難し始めた。
「やるじゃないか……侮っていて悪かったよ。ゾウの神速雷撃を見て、ゾウより本物に近い技を放つなんてね。よっぽど日頃、ウェンから熱心に基礎基本の稽古をつけてもらっているんだろう……」
ラムズは無表情でじっとアシュラスを見ている。
ウェンはラムズに駆け寄った。
「ラムズ……大丈夫か?」
ラムズは振り返って、ウェンを見た。
背丈こそ小さいが、佇まいはもはや戦士だ。
だが、ウェンと顔を合わせるとホッとしたのか、ラムズはまた子どもらしい表情に戻り、もじもじし始めた。
ああ、なでてほしいのか。
そう察したウェンは、ラムズの頭をなでた。
ドレイクは青ざめて隊員に向かって叫んだ。
「ウェン様! なんて不用意なことを! 一旦退避だ! 今の私たちの力では援護できない!」
♢♢♢
アシュラスは、ラムズに向かって攻撃魔法を放った。
その凄まじいエネルギーに、観客は次々に逃げ出した。
普通なら防ぐ間もなく消し炭になるところだが、ウェンが剣技を放ち相殺した。
相殺のエネルギーで巨大な竜巻が起こり、地面がえぐれる。
「見せつけてくれるね……。俺としたことが、お前らを甘やかし過ぎたよ。ラムズは殺す。ウェンも今度ばかりはただで済むとは思うな。半殺しにされないと、お前の生殺与奪は俺にあるとわからないようだからな」
アシュラスは観客席からフィールドにふわりと降りた。
ウェンは後ろにいるラムズに声をかけた。
「ラムズ、覚悟はいいか」
ラムズはしっかり頷いた。
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