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第四章 8

「ほんと、金なくってさー。さっき話した店で、バーテンダーみたいなこともしてた」 「今度はアルコールが入ったのを飲んでみたいよ」   長旅と気疲れで『酒を飲んだら即寝そう』と言っていたハクトと、酒の飲めないアリスに、ウイはそれぞれノンアンコールカクテルを作ってあげた。  ハクトにはライムジュースをベースにした爽やかな『グリーン・サマー・クーラー』。アリスにはトロピカルな味わいで可愛いピンクの『ピーチ・コーマー』。  因みに、ソウは自分で買ってきた缶チューハイで、ユエはペットボトルのミネラルウォーターだった。 「たまにはみんなで飲んだりするのか?」 「いや、全然。ここ来て初めてじゃないかな~」  やっと酔いが回って来たように、にこにこと笑いながら。 「相変わらずだなぁ。みんな」  ハクトのほうは苦笑いをした。 「前に住んでた人がお酒好きだったのか、カクテルの材料も豊富で、オレはたまに作って一人で飲んでる。ユエは酒ダメだし、ソウはユエに合わせてるのと何かあった時の為にあんま飲んでないみたい。飲んでも度数低いヤツかなー。トワは……」  何か思うところがあるのか口ごもる。 「……やっぱり時々飲んでるみたいだな、一人で。飲まなきゃやってられない時もあるんだろ」  自分がそうであるかのような切ない眼差しを、バルコニーにほうへと送った。そんなウイの顔は珍しく、それ以上はハクトも聞けなかった。    二人で黙り込んで飲んでいると、ソウがノートパソコンを持って戻ってきた。 「ハクトさん、何持ってきたの?」 「ああ『黒薔薇の葬送』のMVだよ。SHIUさんから預かってきた」 「ふ……ん」  三人でパソコンを見ながら何やら話しているのを眺めながていると、また嫌な気分になってくる。  それに『黒薔薇の葬送』のMVを見てるっていうのもいただけない。 「オレ、部屋に戻るわ」 「見ていかないのか?」 「怖くて見れないよ」 「怖い……?」  ウイの言わんとしていることがわからず首を傾げる。  ウイは立ち上がりカクテルグラスを持ったまま離れようとしたが、 「ねぇ」  と再び話しかける。ソファーに座っているハクトを上から見下ろした。 「アリスちゃんをここに来させようとしたの、ハクトさんの案でしょ」 「そうだけど」 「ハクトさん、まだオレらのこと諦められないんだ」  お互いに探り合うように視線を絡ませる。 「ーーまあ、諦めろというほうが無理な話だ。今すぐじゃなくてもまた活動してほしいと思っているし、できると思っている。いつだってここから出れる筈なのに、何故か囚われているーーそう思えるのは俺の気のせいか?」  その問いについての返事はない。

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