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第五章 5

「あの、わたし、ましろを探しますね」  ここにいたらまた何を言われるかわからない。その度に一人で赤くなったり青くなったりしてて居たたまれない。 「おれも気をつけてみるよ」 「ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げると薔薇の中を歩き始めた。  その背に。 「余り奥に行かないほうがいいよ、死体、埋まってるかも知れないから」  アリスが立ち止まって、 「ユエさん、ひっどーい」  と叫んだ。 「ほんとに……行かないほうがいい……」  小さくなっていくアリスを見ながら呟く。  そして、また。  薔薇の中に独りで立ち尽くす。 「にゃ」  ふいにか細い鳴き声が聞こえた。  足許で何かが動いている。 「……ましろ、いたんだ」  足に擦り寄りながら行ったり来たりしている可愛い生き物が見えた。  ふわふわの毛玉をそっと抱き上げ、オッドアイを見つめる。 「だめじゃないか、アリスちゃんから離れちゃ」  にゃあとまた一声上げる。 「薔薇の下に……埋められてしまうよ」  冷たい笑みを湛える。  その瞳は濃い緑色に見えた。  途端にふーっと白い毛を逆立て、ユエの手の中から飛び降りる。 「いた……っ」  鋭い痛みを感じ、顔を顰める。  ましろは薔薇の間を走り去って行き、あっという間に見えなくなった。  白い手の甲に一筋の引っ掻き傷。血が滲み出ている。  その傷口を口許に持っていき、赤い舌でなぞった。

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