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第六章 7 *R18
首筋から喉許、鎖骨。
黒のタンクトップをたくし上げて、胸へ。
強く吸いついたり、噛んだりの痕が薔薇の花びらのように散っていく。
(これはオレに対しての『欲』じゃない)
自分の太腿に最初から感じていた熱は、先程の余韻が残っているだけ。
そんなことはウイも承知だった。
(それでもいい。代わりでも何でも、おまえの欲を注ぎ込んでくれればいいんだ)
出逢った時からずっと思っていた。
(一度でいい。この男にちゃんと抱かれたい)
と。
「はぁ……おまえ……男とシタことあるのか?」
熱い吐息と共に自分の胸に顔を埋める男に問うた。
「……ないけど」
薄い乳首に武者振りつきながら答える。
ぞくぞくぞくっとウイの背筋に快感が駆け上る。
「んっ……だろうな」
「ほっとけよ。……ここ男でも感じるんだな」
乳首をきつく噛まれ、引っ張られた。
「つっ」
痛みを感じながらも、それとは別の感覚も生まれる。
けして痛いことが好きな訳ではない。
一番欲しい相手からは一生与えられないものを、いつも他の誰かに穴埋めさせていた。今一番欲しい男にされることはどんなことでも快感に変わるのだと実感した。
(女とは経験豊富そうだが。本当に欲しい男とはまだ……いや、もうこの先一生ないだろう。オレが最初で最後だ)
暗い愉悦で更にぞくぞくしてくる。
下肢の方では熱と熱がぶつかり合っていた。
が。
実際好きでもない男とこれ以上続ければ、萎える可能性もある。
「なぁトワ、男は女とは違うんだよ」
「ん?」
ウイの言葉でトワは顔を上げた。
「このままじゃ、おまえも痛い思いをするってこと!」
気を抜いたトワの身体を思いも寄らない力で反転させる。ベッドに沈ませて腹の辺りに馬乗りになると、傍にあった羽枕で彼の顔を覆った。
「ウイ」
「そのまま待ってろ」
抵抗されるかと思ったが、トワはその言葉に従って静観を決めたようだ。
ウイは馬乗りのまま上体を傾がせ、トワの胸の深紅の薔薇に口づけた。自分のつけた噛み痕を舐めると少し血の味がする。
そこから下方へと舌を滑らせて行く。少しずつ身体もトワの下肢のほうへずらしていく。
自分の太腿の間に硬度のある熱を感じ、まだ萎えていなかったことに、密かにほっとする。
そこで彼は一旦立ち上がった。
八分丈のブルーグレイのパンツを自ら脱いで、床に落とす。いつも全身ケアを怠らない彼のつるりとした綺麗な足が露になった。
トワの両足を跨いで中腰になる。
まずは目の前のベルトに手をかけ、しゅっと抜いてやはりベッドの脇に落とす。
ガチャンとごついバックルが鳴る音がした。
静観していたトワの身体も僅かに身動ぎをした。
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