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第七章 2
だんだんと声が弱々しくなる。最後はもう消え入りそうなくらい。
いつもへらへらと笑っているウイの素顔は真実 はこちらのほうではないかと、トワは思った。自分の中でウイへの気持ちが少しずつ変化していくような気がする。
「じゃあ、改めて言う。これは俺がウイにあげたい。持っててくれ」
「どうして……オレに」
(ユエではなく……)
そこは口には出せなかった。それを言うことでトワの気持ちが変わってしまうかも知れないから。
「なんでかな……」
そうもう一度彼は言った。
「俺にもわからないけど、あんたに持ってて欲しいんだ。『あの日』のように一晩の礼とかじゃなくてさ……」
胸の内にはいろいろな思いが渦巻いている。しかしそれは形にならず、どうしてそう思うのかトワ自身にも説明がつかない。
トワの手の中で、ウイもきゅっとネックレスを握り締めた。
ユエではなく自分に与えられたのだという嬉しさを噛み締める。
「わかった。またオレがつけておくよーーありがとう永遠」
涙を堪えるように笑った。
★ ★
それからひと月。
シルバーのネックレスはウイの胸許に揺れていた。
二人の関係が少しずつ形を変えていくのを象徴するかのように。
その変化は本当に静かなものだった。
それまで広い館 内で出会うことも希だったが、ウイの部屋にトワがふらりと立ち寄ることが多くなった。
ウイも部屋の移動を止めた。トワが訪ねて来易いように。
話をするわけでもなくただ同じ部屋で過ごす昼下がり。
他愛ない寝物語をしながら、一緒のベッドで眠る夜。
ギターとベースを弾きながら、二人で曲を作り始めた。
BLACK ALICEの楽曲とは違う、今の二人に間に流れる空気のように、穏やかな優しい曲。こうして二人が一つの曲を作るのは初めてのことだった。
ーー優しい時間を経て……。
二人が肌を触れ合わせたのはあの晩以降はないのに、心だけは確実に近づいていることをお互いが感じ合っていた。
(この先にあるのが、滅びの運命だというのに……)
★ ★
「……また、四人に戻ったな……」
ベースを軽く鳴らし指を止めると、ぽつりと溢した。
ウイの部屋の絨毯の上に並んで胡座をかいている。それぞれ楽器を持ちながら。
「そ……だな」
嵐のような『あの晩』から一週間程が過ぎて、やっと気がつく。
広い洋館の中でそれぞれで過ごし、出会わない日もあるからだ。
『あれ、ハクトさん、帰ったんじゃなかったの?』
『車が故障したらしい。今ソウがみている。直るのを待つよ』
ウイとハクトがそんな会話を交わした日以来、彼とは会っていない。
そうトワに話した。
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