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第16話 榊と煌④ ※タコ小説の続き

カイは夜のパトロールがすっかり怖くなってしまい、先輩の|榊《さかき》に相談した。 榊は成人部の若手で一番の実力があり、地球防衛隊が保有している最も強い武器の一つ、鬼切丸の使い手だった。 「榊さん……俺、もう夜のパトロール行きたくないです……」 「そうなの? 最近、よく宇宙人をうまく保護してるから、順調かと思ってた」 「宇宙人が怖いです……(ツバサも怖い)」 「そうか……。少し、頑張り過ぎたのかな?」 カイは、ぶわっと泣いた。 榊は自分のハンカチを取り出して、カイの涙を拭った。 「ありがとうございます、あの、少しの間だけでいいんで、パートナーを変えてもらえませんか? 同じレベルだと不安なんで、できれば榊先輩にお願いしたいのですが……」 「いいけど。じゃあ、ツバサと|煌《こう》がパートナーになるね」 榊と煌が普段はパートナーなので、相手を交換するということになる。 「すみません、急に……」 「大丈夫だよ。普段の訓練で同じチームなんだから。ツバサとケンカしたの?」 「……いえ。ただ、俺がパトロールに後ろ向きだと、何かあったときにツバサの足を引っ張っちゃうから」 「そうなんだ。わかったよ」 こうして、その日のパトロールは、パートナーが変わることになった。 ♢♢♢ 「カイとケンカしたの? パートナー変えるなんて、なかなかないじゃん。結構ヤバいの?」 煌がニヤニヤしながらツバサに聞いた。 「むしろ仲良くなったら、距離をおかれました……」 ツバサはしょんぼりして言った。 「え? どういうこと?」 「僕は……カイのことは好きだし、尊敬してるからもっと仲良くしたいんですけど、カイはそれが嫌みたいで……」 「あんまりしつこくしたらダメだよ。避けられたら元も子もないじゃん」 「でもっ! こんな可愛いカイを見て、平気でいられる方がおかしいと思うんです!」 ツバサは、先日のクラゲ星人の動画を煌に見せた。 「おやぁ……なにこの触手系エロ動画……。うんうん、触手の形が変わるなんて、クラゲ星人にそんな能力があるとはね……。で、うん、あら、カイったら、キス顔そんななのねぇ……かわーいーいー。……うん、あらま、そんな大サービス……。え、ええっ……! 何コレ、うらやま……」 煌は、食い入るように画面を見ている。 「ここから、薬が効いてきます」 「……うん、ああ、もうカイったら、そんな自分から……。あ、いや、わかるよ。クラゲ星人の毒は強力だから、自分の意思とは無関係だよね……。でもそれがまたイイっていうか……。で? このクラゲサービスは、いくら払えばやってもらえるのかな?」 「やってくれるかはわかりませんが、連絡はとれますよ」 「マジか。行こう。今日ちょうどお前とパトロールだし」 「じゃあ、会えるように頼んでみますね」 「いや、パトロールでこんな楽しいことが巻き起こってたんで知らなかったよ。今まで損した気分だ」 「煌先輩と榊先輩は、元から危険区域に行きますからね」 「そうそう、榊がいると生きるか死ぬかしかないような雰囲気になるからさ、頼もしいけど、まずこうはならないねぇ……」 煌は動画を巻き戻して見ている。 「この動画はおいくらなの?」 「売りませんよ。僕の大事な宝物なので」 「お前、親友っていうか戦友として、どんな気持ちでコレ撮ってんの?」 「……なんか、もう、です」 「……なんか、もう、なのね……」 こうして、夜のパトロールが始まった。

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