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第20話 スライム星人

「大丈夫ですか?」 二人は倒れている人に駆け寄った。 可愛い女の子だった。 『あ……すみません、ちょっと立ちくらみをして』 「立ちくらみってレベルじゃないくらい、倒れてますけど……」 カイが言った。 「……検査機の反応を見る限り、スライム星人ですか?」 ツバサが言った。 『はい、人間に擬態しながら生活しています』 女の子に化けたスライム星人が答えた。 「大丈夫そうですか?」 『ええ……大丈夫になってきました』 スライム星人は体を起こして、カイとツバサをじろじろと見た。 「何か……?」 カイが訊いた。 『あなたの方が素人っぽくていいかも』 急にスライム星人は、体を透明なスライムに変え、カイにまとわりついた。 「うわっ!!」 「カイ!!」 スライム星人が、カイの全身の表面を覆った。 ツバサは、凝固スプレーを出してスライムを固めて砕こうとした。 が、体を操られているカイがうまくかわすので、なかなかスプレーがかからない。 そうしている間に、スライム星人がカイから離れた。 そして、カイそっくりの形に変身した。 『本物の地球防衛隊の男の子になれるなんてラッキー! 稼がせてもらうからねっ』 そう言ってスライム星人はまたスライムの形になり、道路の排水溝に入って逃げていった。 ♢♢♢ ――1週間後―― 二人は、榊と煌に呼び出された。 「最近、カイとよく似た少年ポルノ動画が出回ってるんだ。まさか、本人じゃないよね」 榊が言った。 「俺じゃありません!! あのスライム星人ですよ!!」 カイは叫んだ。 「なら良かった。一応、確認でね。人間の児童ポルノ規制が強化されている分、宇宙人がなりすまして出演している事件が増えているんだ。だが、宇宙人は架空の人間になったり、二次元情報からは変形できない。”型取り”が必要なんだ。だから、この出演者は、先日報告があったスライム星人だというのは明白だ。まずはこのスライム星人の居場所を突き止めて、逮捕しよう」 榊が言った。 「随分、凝った作りのシリーズものになってるんだよ。タイトル一覧見てみ」 煌がタブレットを二人に見せた。 ――待望の地球防衛隊シリーズ! なんと、本物の少年隊員が出演!―― 『憧れの地球防衛隊に入るには、秘密の採用試験を受けなければならない! 少年Kの【自主規制】が【自主規制】で【自主規制】される! この快感に耐えられたら合格!』 『過酷な訓練! 鬼畜上官の【自主規制】が少年Kの【自主規制】を【自主規制】して、【自主規制】になってしまう! これぞ愛の鞭!』 『連帯責任! 任務の足を引っ張った少年Kには、チームのメンバーからのお仕置きが待っていた! 彼らに囲まれた少年Kは、【自主規制】を【自主規制】されて、さらには【自主規制】されてしまう! 彼らが満足するまで終わらない!』 『想像を超える快感……! ついに宇宙人と対決する少年K! だが、好奇心旺盛な宇宙人たちに【自主規制】を【自主規制】されて、【自主規制】が【自主規制】になったり【自主規制】になって、【自主規制】【自主規制】【自主規制】だった! 本物の宇宙人の生出演! 無修正ノーカット!』 「もうやめてっ!!」 カイは机に突っ伏した。 「なんか人気出ちゃって、売上ナンバー1らしいよ」 煌が言った。 「そんな追加情報いらないです……」 カイが答えた。 ツバサがお試し動画を再生した。 大抵は嫌がる少年Kが弄ばれるが、最後はKもノリノリに……みたいなパターンだ。 「俺はちゃんと捜査のために全部見たけど、やっぱり嘘くさいというか、素人っぽくしてるだけで演出だな、とは思うよ」 煌が言った。 「煌、動画の評価じゃなくて、捜査に対するコメントをしてよ」 榊がたしなめた。 「ん? ああ、まあ、今回が初めてじゃないだろうから、他の少年少女ポルノも見て、共通点を見つけて制作側から叩いてもいいだろうし、そういう奴らがいそうな場所に直接乗り込んでもいい気がする」 動画がある分捜査自体は楽だし、バックに怖い組織がいても、榊の権力と鬼切丸があれば裁判なしでその場で粛正できる。 「早く捕まえたいです……親が泣きます……」 カイが言った。

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