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第9話
この人に甘えて縋りつきたいと思う。
けれど、それが許されることなのか分からない。
これは僕にとっては食事なのだと言い聞かせる。
もしかしたら入れてくれるのではと期待してしまう。
精液を中でぶちまけて欲しい。
味あわせて欲しい。
淫蕩にふけりたい。
『大したことない顔なんだし、処女だっていう付加価値すら無くなったらお前に価値が残ると本当に思っているのか?』
何度も言われた言葉を思い出す。
僕の唯一の付加価値がなくなることをこの人は許してくれるだろうか。
その付加価値を含めても自分は碌な価値が無いと自分でも思う。
それなのにそれを願っていいのだろうか。
「あ、あの……」
宗吾さんは何を勘違いしたのか、中を探る手はそのままに僕にキスをくれる。
甘い唾液に思わずうっとりとしてしまうし、中をこすられるのはたまらない。
どう強請《ねだ》ればいいのだろう。
上ずった喘ぎ声しか口からは出てこない。
思わず自分の腹を撫でる。
それからどう頼んでいいのか分からず、宗吾さんに直接聞いてしまった。
「僕の処女を貰ってくれませんか?」
嘲笑されるかと思った。前の主の嘲笑う様な顔を思い出す。
宗吾さんは大きく目を見開いてそれから「ほんと君は、わざとじゃないんだよな?」と聞いた。
態との意味が分からなかった。
どうしたらいいのか分からなくて、苦し紛れに正直に言葉にしているだけなのに。
「『大したことない顔なんだし、処女だっていう付加価値すら無くなったらお前に価値が残ると本当に思っているのか?』」
前の主に言われた言葉をそのまま復唱する。
宗吾さんは、はあと大きなため息をついた。
「他に言われた事、後で必ず聞かせる様に」
”後で”と宗吾さんは強調した。
何故そんなことを聞きたいのか、しかも後でないといけないのかはよく分からなかった。
それから「まだ、ちょっときついかもしれないけど」と付け加えて、彼の切先を僕の孔に押し当てた。
「あッ……」
という期待した声を上げてしまって恥ずかしい。
躰が期待で小刻みに震える。
期待なのか歓喜なのか自分でもよく分からない。
今日初めてあった人なのにこんな悦んでいて自分でも馬鹿じゃないかと頭の端っこで少しだけ思っている。
淫魔なんだから仕方がないと言い訳してしまいたい。
だけど体と心が結びついていないみたいだ。
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