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第10話
自分よりも温かいものが中に入ってくる感覚におののく。
こんなに熱く感じるとは思わなかった。
今まで全く何も挿入したことが無かったわけではない。
道具を使った自慰をすることになったことが何度かあった。
だから、自分のどこが特に感じるのか全く知らない訳ではないけれど、こんな風に広げられるのは初めてで、思わず悲鳴の様な声が出てしまう。
きもちい、きもちいい。
おなかの中がそれで一杯になる。
目の前の人が誰か、という事よりも快楽とそれから食欲の事ばかりで頭の中が埋め尽くされてしまう自分が嫌だ。
「あぁっ――」
はしたなく甲高い声を上げて、宗吾さんの陰茎が根元までねじ込まれる感覚を味わう。
快楽を受け止めきれなくて手が、シーツの上でもがくように動いてしまう。
初めてなのだ。
どうしたらいいのか分からない。
媚びるのが普通だと、誰かに言われたのを思い出すが媚び方が分からない。
そもそも僕が媚びて、宗吾さんは嬉しいのだろうか。
「手はこっち」
爪立てていいから。
全部が僕の中に入って、それから僕の呼吸がちょっとだけ落ち着くのをまって宗吾さんは僕の手を取った。
それから、自分の背中に僕の手を回すように促してくれる。
縋っていいのだろうか。
思わず宗吾さんの肩甲骨をなでて感触を確認してしまう。
ふっと、宗吾さんが吐息だけで笑った気がした。
その小さな振動が伝わる距離にいるという事に少し自分でも驚く。
今日も今までと変わらない日になるはずだった。
名前しか知らない目の前の男の人を抱きしめる手に力を入れてみる。
それが合図みたいに、宗吾さんは、ゆるゆると抽挿を始めた。
「あっ……あ゛ッ、んっ……」
躰が悦んでいる。
全身の細胞がざわめいているみたいに快感を拾う。頭の中がそれで一杯になる。
トントンと奥を突かるとたまらなくなる。
先走りに粘膜がよろこんでいるのか吸い付いてしまっているのが自分でも分かる。
下半身ぜんぶが気持ちいいでいっぱいになって息が上がる。
思わず宗吾さんの背中に回した手に力をこめすぎて、爪をたたてしまう。
振り払われるかと思った手は振り払われず、その代わり情欲のこもった視線を向けられる。
自分がそういう目で見てもらえるとは思っていなかった。
宗吾さんがどういうつもりで僕を買ったのかはわからないけれど、彼がくれる刺激に身を任せてしまいたいと思った。
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