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第14話
ガツガツと抉られる様に中をかき回されているのに、痛みは全くない。
体は快楽ばかりを感覚として脳みそに送る。
逃しきれない感覚から逃げたいのに、手首をつかまれている所為でシーツをかきむしる事すらできない。
昇りつめていく感覚は下肢どころか、足先から頭の先まで広がっていく。
ちかちかするようなピリピリするような快楽が足元からせりあがってくる。
「は、んっ……あぅっ」
口は閉めることが難しくて、だらだらと唾液がこぼれている。
気持ちよくて、気持ちよくて他の事はもうどうでもいい。
昇り詰める感触にひたすら喘いで、ただ、中をえぐる陰茎とその後に吐き出されるであろう精液の事だけを考える。
待ちわびていたものなのだ。
だから、この感覚だけ受け入れて他は何も考えない事にした。
◆
お互いに達した後、ただ荒い息を整えるために無言だった。
行為中つかまれていた手首を離してもらってベッドに体を投げ出す。
腹が満ち足りているという感覚は初めてに近い。
ぼんやりと力を抜いてしまうと、尾てい骨の上をつい、と撫でられる。
思わずビクリと震えると宗吾さんが笑う。
「色綺麗な紅色だ」
そこに文様があるらしい。
それが色づいているという話なのだろう。
契約で紋章が浮き上がる生き物の話は、聞いたことがある。
けれど僕はこの人と具体的に契約をしたわけでは無い。
あの書類がそういう事であれば、そういう事なんだけれど、あれはまるで僕が関係のないものだった。
それに、僕が思うに僕の背中のそれは多分空腹になると薄くなる類のものなのだろう。
だから今まで誰にも指摘されなかったのだろう。
繰り返し撫でられて、甘い快楽がじわじわと体に広がる。
「まだ、セックスしたいんですか?」
直截だろうか。
余韻というものが、必要なのか、睦言はどんなことを言うのがいいのかも何も知らない。
誰かに教えておいてもらいたかったと思う。
振り返って見上げた宗吾さんは困ったような顔をしている。
「まだしていいのなら、いくらでもするけど……」
宗吾さんが言いよどむ。
何故そこで言葉を詰まらせたのか、僕にはよく分からない。
「何か着るものが必要だな」
代わりに宗吾さんが言ったのはそんな言葉だった。
多分もともと言おうとしていた言葉ではない。
それ以上聞ける立場にいない事くらい、わきまえている。
そもそも、行為が終わってこうやってベッドにいること自体いけない事なのかもしれない。
そのための生き物なのだから、終わったら速やかにベッドから降りなければ叱られるのかもしれない。
だけど、甘い余韻に少しだけ浸っていたかったのだ。
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