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第15話
少しばかりベッドの上で微睡んだ後、宗吾さんが準備してくれたのは、彼が普段着ているであろうTシャツと、ひもでウェストを縛れるタイプのハーフパンツだった。
「とりあえずの服は手配したから、今日はこれで」
と言って渡された服に袖を通すと宗吾さんは妙に喜んでいるように見える。
自分のものを着せるのが楽しいのだろうか。
行為の後シャワーを浴びて、ドライヤーで髪の毛を乾かしてもらう。
手際よく動く宗吾さんと、そんなことはされたことが無くて戸惑う僕。
ぼんやりとドライヤーの風を浴びると、何となく今の状況が分かった気がする。
宗吾さんは、多分僕の事を犬か何かだと思っているかもしれない。
犬の餌やりに付き合ってくれているという位のものなのかもしれないと、何故か嬉しそうにドライヤーの風を僕に送る宗吾さんを見て思う。
犬を世話して喜ぶ人間の話は聞いたことがあった。
「俺の事が嫌いかい?」
宗吾さんはドライヤーのスイッチを止めると静かに聞く。
「え?」
「……セックスが嫌だったんだろう?」
思わぬ質問に変な声を出すと、宗吾さんはやや間を置いてからそう言った。
何だろう。なんと答えればいいのだろう。
「自分が淫魔だということが嫌なのかもしれません。」
宗吾さんの事は、好き嫌いが分かるほど知らない。
セックスはきちんと気持ちよかったし、腹もふくれた。
じゃあ、僕が嫌なのは何なのか。考えて出した結論はそれだ。
嘘をついてちゃんと媚びた方がいいんじゃと思ったけれどやめた。
媚びたところで僕はかわいいタイプではない。
ただ気持ち悪くなるだけな気がしてしまった。
しかも、自分が人でないことが嫌なのか淫魔であることが嫌なのかさえも自分自身でよくわからない。
ペットの犬が、自分が犬なのが苦手だと言われたら飼い主はどんな気持ちになるのだろう。
案の定、宗吾さんは微妙な顔をしている。
しかも、僕はセックスをしないと餓死してしまうのだ。
セックスをしないという選択肢はないのに、そんなことを言う。
馬鹿なのだろう。
それなのに、宗吾さんは僕の頭を二度ほど撫でて「なら精液を飲むだけにするか?」と言った。
「その後、セックスをしてみればいい。それで普通のセックスが好きか嫌いかわかるだろう」
あまりに普通の事を言われて、思わず頷く。
そんなことをして宗吾さんに何の利点があるのか分からない。
そもそも、何の利点があって僕の事を購入したのかさえ分からないのだ。
今言っている部分の利点が分かる訳が無い。
「そういえば、僕はどこで眠ればいいですか?」
話すことを諦めてそう聞くと宗吾さんは当たり前のように「ここで眠ればいいだろう?」と答えた。
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