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第19話
「宗吾さんはセックス好きですか?」
彼にとって性行為は食事ではない。
僕と価値観が違う生き物だと知っているのに思わず聞いてしまう。
僕には今話を聞ける人が彼しかいない。
セックスが好きだからするのだろうか。どんなセックスが好きなのだろうか。
宗吾さんはギクリと固まった後、こちらを見る。
「加納……、君の前の所有者が加虐嗜好だったからそんなことを聞くのか?」
宗吾さんそう言われるがよく分からない。
僕を虐めて喜ぶ人だったという事だろうか。
エスとかエムとか、そういうのだろうか。
そういえば、あの人は他の淫魔を縛ったりしていた。
「宗吾さんも、そういうのがお好きなんですか?」
僕が聞くと宗吾さんは少し困ったような顔で笑った。
「俺は、どちらかというとそっちより、支配欲求の方が強いタイプだから」
だから、さっきの質問の答えはセックスは好きだって事だな。
出来れば相手にもそのことばかり考えるくらいに追い詰めたいねえ。
困った顔をしていた筈の宗吾さんの瞳が一瞬獰猛な色をたたえた気がした。
ぞくりと震えてしまうのは本能からなのか、それが別の何かなのか。
「じゃあ、僕がセックスが好きか試してくれますか?」
僕が聞いた言葉に宗吾さんは「勿論」と笑った。
まずはお腹いっぱいになろうか。
宗吾さんはそう言うとスラックスを寛げて陰茎を僕の顔の前に差し出す。
舐めろ、という事なのだろう。
宗吾さんはぶっきらぼうな時と優しい時がある。
どちらが本当の宗吾さんなのかはよく分からないけど、食欲を満たしてくれるというなら断る理由が無い。
それに、こうやって直接舐めて精液を出すのは分かりやすい。
口の中の唾液があふれてくる。口腔内をこの人のものでいっぱいにして欲しい。
これは僕の食欲だろうか。
思わず唾を飲み込むと、宗吾さんは僕の頬を撫でた。
◆
跪《ひざまず》いて宗吾さんの陰茎を舐める。
亀頭の部分を舐る様にして、それからそのまま裏筋に沿って根元まで舌を這わせる。
少しずつ硬度を増していくのを舌で感じながら全体に涎をまぶす様にする。
つるりとした亀頭の感触がたまらなくて舌で念入りに舐めた。
これは好きって事だろうか。
それとも俺が淫魔だからだろうか。
よく分からない。
それから、口を開けて先っぽを咥える。
どういう風にするのが煽情的なのかは僕にはわからない。
フェラチオをするときの表情が滑稽だと笑われた事はあった。
ただ、食事として協力されているという建前が逆に気持ち的に楽になれた。
じゅぶじゅぶと音をさせながら、完全に立ち上がった陰茎を根元まで咥える。
にじむ先走りが少しだけしょっぱくて、腰のあたりが重たくなる。
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