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第20話

美味しいと思う。 たまらないと思う。 「気持ちいいですか?」 頭を撫でられて少し嬉しいのは、犬の様なものかもしれない。 犬だと思われることが引っかかるのは自分が人だと思われたいからなのか。 情動に滲んだ瞳が僕の事を見下ろしている。 僕は興奮にあたいする生き物だという事だろうか。 鈴口を喉に押し付ける様にしながら考える。 宗吾さんはセックスの相手に困る様なタイプには見えないし、僕は貧相で普通は欲情されないタイプだ。 それが大して上手くもないであろう口淫で、欲に濡れた目で見降ろしてくる。 この男の趣味が独特なのか、それとも誰にでもこうなのかは分からない。 けれど、悪い気はしないと思ってしまった。 舌を竿に絡ませてると、ふっという宗吾さんの感じ入った吐息が聞こえる。 もっと、もっととねぶってしまう。 口の中にある宗吾さんのもので頭がいっぱいになる。 顔を前後に動かしながら、自分も「ん、ふぅッ……」と気持ちよくなっている声を上げてしまう。 唾がだらだらとこぼれているのが分かる。 「美味そうだな」 宗吾さんが言う。 視線を彼の顔に戻す。いったん口から出すのは惜しいと思ってしまったので、ただ微笑んだ。 多分、それがいけなかったのかもしれない。 宗吾さんは目を細めると、そのまま僕の顔を両の手で固定して、腰を穿つ。 喉の奥を抉る様に抽挿を繰り返されて、えずきそうになる。 涎が口の端から落ちる。 宗吾さんの陰茎が先ほどより一段と硬くなっている。 思わず歯を当てないのは、僕がそういう風にしつけられてしまった証拠だろうか。 ぬぶぬぶと前後に口内を犯されて、自分の下肢がじくじくと疼くようだ。 唾液が少しだけ泡立つ位ガツガツと口内を蹂躙されて、涙がにじむ。 けれどそれは苦しいだけではなくて、快楽を拾っているためのものだと自分自身が一番よく分かっている。 「ん、ふ……、んぅ」 漏れる吐息は完全に色を含んだものになっている。 上あごにゴリゴリされるのが、気持ちいい。 舌が、性器そのものを味わいたくて必死に陰茎に押し付けているのが自分でも分かる。 先走りの味はもちろんたまらなく気持ちいいと思うのに、それとは別に舌で陰茎の形を味わいたいと思っているのだ。 口淫自体に快楽を見出して、それに夢中になっていることに気が付いている。 この行為自体がたまらなく気持ちいい。 浅ましくもそう思ってしまった。

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