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第34話
「那月、かわいい」
言われた言葉は慣れない。
実際、僕は別に可愛いと言われるような容姿ではない。
可愛いものにだけかわいいというべきだ。
けれど、お腹が空いている思考だと、もっとかわいいと言われたいと思う。
もっと可愛がって欲しい。
体中を、すべて暴いて可愛がって欲しいと本能が言っている。
自分の息遣いばかりやけに大きく聞こえて、興奮してるのが自分でも分かる。
浅ましい僕を、やさしく何度も撫でて、それから口で体液を交換する。
くちくち、と音を立てる後孔に、宗吾さんの昂りを沈めてもらった瞬間「ふぁっ……」という嬉しそうな声を上げてしまった。
それなのに、宗吾さんは嬉しそうに吐息で笑った後、僕の頬を撫でる。
この行為は食事で、多分性欲処理だ。
そのために僕らが売り買いされていることもちゃんと理解している。
だけど、宗吾さんが僕にあまりにもやさしく触るので勘違いしてしまいそうになる。
先走りが粘膜にこすりつけられて、気持ちいい。
美味しい。
宗吾さんの体液の味は好きなのかもしれない。
と言っても中から味わったことがあるのはこの人だけなので、比較のしようが無いのかもしれないけれど。
「あっ、あっ、ダ、メっ、やぁっ……」
ひっきりなしに上がり続ける嬌声は、食事とも処理ともかけ離れて、ひたすら甘えている。
甘えたいからこんな声が上がるのか、自分がそういう生き物だからなのか。
僕にも分からない。
でも、気持ちいい。中をゴリゴリされるたびに内壁がキュンキュンと吸い付いてしまっている。
嬉しいって体が言っているみたいだ。
一番奥で宗吾さんが吐精したのが感覚で分かった。
塗り付けられる様に、中を擦られて、鼻から抜ける様な媚びた声が出る。
精液を塗り付けられるの堪らない。
ぬるぬるの中でまだまだ固い宗吾さんの陰茎を締め付けて催促をしてしまう。
「まだ、お腹いっぱいにならない?」
宗吾さんに聞かれて、夢中で頷く。
もう一回してもらえるかもしれない事実に、ゆるゆると腰が動いてしまう。
もっといっぱいしてほしい。
「那月、かわいい」
今度はそっと尻尾を撫でられて、甲高い声を上げてしまった。
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