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第40話
次の水曜日、ハウスキーパーさんは「許可とったよ」と言って笑ってくれた。
「君の話相手になっていいっていうから」
ソファーに座ってコーラのペットボトルとレモンティのペットボトルを差し出される。
どちらか選べという事なのだろう。
どちらも僕にとって栄養にはならないものだ。
それを進めてくるハウスキーパーさんにとっても同じことなのに、まるで人間の様に飲み物を勧めてくる。まるでそれが当然という様に。
炭酸が舌にふれるのはあまり好きではないのでレモンティを受け取る。
「おやつ、とか普段から食べませんか?」
その人はまるで何もかも分かっている様な口調で僕に言った。
「宗吾さんは、僕と何でも話していいって言ったんですか?」
おやつの話はどう答えていいのか分からなくて、大切なことを聞く。
「あれとは、友人なんですよ」
ふふっ、とハウスキーパーさんは笑った。
「正確には俺のパートナーと友人なんですが、あいつ共々まあ仲良くさせてもらってます」
この人の口から聞かれたパートナーという言葉に心がざわりとする。
言葉の意味が分かっていない訳でもなければ、そういう制度があることも知っている。
だけどやっぱり僕達には関係の無い言葉に聞えて、それを当たり前の様に言う目の前の人になのか、自分自身へなのか自分が淫魔だという事なのかも分からないけれど、不用意に内臓を舐められた様なそんな不快感が確かにあった。
「あんたもしかして、セックスの時突っ込まれる方が下だと思ってるタイプ?」
丁寧な言葉遣いをやめたらしい。ぶっきらぼうに聞かれて一瞬息をのむ。
ただ、言われた言葉の強さに息を飲んだ訳ではなかった。
「そっちじゃなくて、体液を摂取しなければ餓死するって時点でこっちの方がどう考えても下じゃないですか」
「は?」
言い合いになると思っていたけれど、その人から発せられた、「は?」は怒気をはらんだものというより心底不思議そうな声だった。
怒らせたわけじゃない。ただ、何を言っているのか分からなさそうな不思議な顔をしている。
「何言ってるんだお前」
それは質問というより確認だった。
けれど、彼が何をそんなに疑問視しているのか僕には分からなかった。
「だって、僕らは精液を飲まないと死んでしまうじゃないか」
僕達はそういう生き物なのだから。
誰かに恵んでもらわないと生きていけないというのはそういう事だ。
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