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第41話

「まあ、広義ではそうだけど、別にそれ以外の方法だってあるだろ」 ハウスキーパーさんは普通に言った。 「挿入されなくても精液だけ飲んでれば、死なないのかもしれないですけど」 そもそも効率が悪い。だから宗吾さんだってその方法をとらなかった訳で。 それに、僕が言いたいのはそういう事じゃない。 人間に縋らなければいけないって事にはどちらにせよ変わらないじゃないか。 僕だってこの人だって、誰かに縋って生きている。 「陰茎で胎を満たす。 それで悦んでいる自分に打ちのめされるんですよ」 僕が言うと、その人は少しだけ驚いた様な顔をした後、とても優し気な表情に変わった。 「ああ、まだ君は子供みたいなものなんだねぇ」 優し気な表情で言われる。 先ほどのぶっきらぼうは変わらないのに、そこに優しさが含まれたみたいな不思議な声色だ。 「お互いが同意してるなら、セックスでもなんでも別に悪いことじゃないと俺は思ってるんだけど」 だけど、君はそれ以前の問題だねえ。 とハウスキーパーさんは笑顔を浮かべながら言って、それから僕の頭をそっと撫でた。 嫌悪感は無かった。 「体液を飲まなくたって、愛があれば淫魔は生きていけるよ」 僕の髪の毛を優しくすきながらその人は穏やかな口調で言った。 「愛?」 僕はその人の事を見つめた。 本当の事を言っているのか嘘を言っているのかは分からなかった。 だけど、愛という言葉を聞いて真っ先に頭の中に浮かんだのは宗吾さんの顔だった。 「そう、愛だよ」 ふふっとその人は笑顔を浮かべる。 「淫魔はね、自分が愛した人に愛されれば、食事はしなくても生きていけるよ」 当たり前の事を言うように、その人は僕に伝えた。 「まずは、自分の事をちゃんと知ることから君は始めるといいと思うよ」 俺も協力するからさ。と相変わらず優し気な顔で言う。 「あなたは、愛を食べて生きているんですか?」 声は少し震えていた。 僕とは違う食べ物を食べているのかもしれないその人は、ふわりととてもとても綺麗な表情で笑うと「愛っていうのは、思った以上に美味い食べ物だよ」と答えた。

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