セックスというのは心の触れ合いなのだそうだ。 食事が、心の触れ合い？って不思議に思うけれど、そう言えば人間は誰かと食事をすることが心を通わせることに繋がるって思っているらしい。 そういうのと同じことだろうか。 今日ハウスキーパーさんが僕に飲み物を渡して、真似事の様に二人で飲み物を飲んだのは多分そういうことだったのだろう。 心を通わせるための人間風の儀式を多分したのだ。 お互いにそれで腹が満たされないと知りつつも心を寄せるための行為。 僕が宗吾さんの事を知りたいと思うのは、心を通わせたいと思っているからだろうか。 彼の心に触れてみたいと僕は思っているのだろうか。 「この前みたいに、やめてあげられないかもしれないよ？」 宗吾さんに言われる。 「今日は正直あんまり俺にも余裕がない気がするから」 自嘲気味に宗吾さんは言うけれど、なぜ彼がそんな風なのかは僕にはよく分からなかった。 宗吾さんが困った顔をしながら僕の頭をもう一度撫でた。 やっぱり宗吾さんに撫でられるのは好きだ。 僕に分かったのはそれだけだった。 ◆ ベッドルームまで抱きかかえられてそれから、ベッドの上に降ろされる。 これは多分、丁寧ってやつ。 大切なものにするやつなのかもしれないって、ようやく思いいたる。 この人は僕の事を、少なくとも大切だと思っているのかもしれない。それを彼は“執着”と呼んでいるけれど、僕にはそう思えた。 大切にされるのは嬉しい。 ベッドに降ろされるとそのままキスをされる。 僕の舌の根元まで宗吾さんの舌が絡みついて、舐めあげられる。 舌の奥を舐められると、上手く鼻でも息ができない。 いつまでたっても僕のキスは上手くならない。 無意識に宗吾さんを押しやろうと手が彼の胸板に触れるけれどびくともしない。 そんな僕の動作に、宗吾さんは僕の頭の後ろに手をのばして頭を固定してしまう。 それから、宗吾さんの舌は僕の歯列をなぞって上あごを丹念に舐めあげる。 何度も角度を変えて、唇が触れる。 舌を絡ませて唾液を飲まされる。 今日はまだ、あまりお腹は空いていない。 けれど、宗吾さんの唾液は甘くて、頭の中まで痺れる様だ。 不思議と恐怖はあまりない。 この人は僕を大切にしているって知っているからだろうか。 よく分からないのは前と同じだけれど、怖くはなかった。 もうこの人を怖いと思うことは無いのかもしれないと思った。