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第50話
人間は基本的に動物には欲情しない。
この人も多分そうだ。
恋愛感情がわかない相手に興奮できる人とできない人がいる。この人も僕も多分、恋愛感情の無い相手に対して興奮できる。
似た者同士って程の共通点ではない。
しつこく口内を舐めあげられていた唇が離れていく。
唾液が筋になって、顔が離れていく途中でぷつんと切れる。
舌を絡めすぎて、なんだか唇も舌も腫れぼったい気がした。
宗吾さんが上着を脱いでその中に来ているシャツも脱いで上半身裸になる。
刺青が見える。
彼は、ヤクザじゃないと言っていた。
「刺青、なんで入れたんですか?」
「ああ、これ? 若気の至りみたいなやつなんだけど」
ちらりと宗吾さんは自分の刺青の方に目をやって、それから困ったように笑う。
「うちの一族の人間は割と入れてるんだよ。
お互いに親戚だって分かる様に」
うち、割と親族同士の結束強いんだよ。執着したものがあると色々融通し合わないと生活もめんどくさいしね。
どうしても自分の執着したものと離れられないものは出張にも行けないし、逆に常に身に着けていたい人間、色々らしい。
そういうとき、執着の事を知っている人同士の方が気楽らしい。
仲間かどうかを見分けるための印の様な物。そういう風に宗吾さんは説明してくれた。
「そんな事より、こっちに集中して」
鎖骨に音を立てて吸い付かれて、鼻から抜ける様な声が出てしまう。
丁寧に体が暴かれていく感覚がくすぐったい様な、照れくさい様な、不思議な感覚になる。
宗吾さんに押し倒されて、のしかかられる。
僕を見下ろす宗吾さんと目があった。
何となく、思い付きのように僕は宗吾さんの頭に手をのばして、彼の頭を二度ほど撫でた。
いつも彼が僕にやっているように。
彼の髪の毛は見た目の通りサラサラで、もう少し触っていたいと思う。
もっとと思って伸ばした手は彼の手につかまって、そのままベッドに縫い付けられるように押さえつけられる。
彼の掌がいつもより熱い気がした。
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