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第51話
宗吾さんがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
人間もセックスの前は喉が渇いたような感覚がするのかもしれない。
人間になることは一生無いので本当に同じかは分からないけれど。
もう一度、宗吾さんは吐息まで奪う様なキスをした。
飲みきれない唾液が口の端を伝うのに、手をとられているためぬぐう事さえできない。
唇をようやく離されて、はあ、はあと上がってしまった息遣いだけが聞こえる。
宗吾さんが僕の着ていたシャツを脱がせる。
「痛くはしないけど、辛かったら俺に爪立てていいから」
宗吾さんが僕を見下ろしていう。
爪を立てる。
多分そうして欲しいから言っていないことくらい僕にも分かるから、できれば避けたいと思った。
この綺麗な人に傷をつけたくない。
まず、鎖骨を撫でられる。
それから脇から脇腹にかけて、宗吾さんの指が伝う。
僕がどんな反応をするのか確認するみたいに体を撫でて、それから胸を揉むみたいに触れられる。
少しだけくすぐったくて身をよじる。
そのタイミングを狙ったみたいに、乳首に宗吾さんの指が触れる。
「乳首だけでイッったことある?」
「へ?」
宗吾さんに言われたことの意味が一瞬分からなかった。
セックスで僕が気持ちよくなる必要は全くない。
食事になりさえすれば僕の感覚なんて何も関係ないのだ。
だから、自分が達することについてあまり意識したことは無い。
大体なんでも性的快楽に変換する脳みそだという事は知っているけれど、そもそもそこまでいたぶられたことが無い。
自慰を強要された時位かもしれない。
「多分無いです」
「ふーん。そう」
宗吾さんは嬉しそうに口角をあげて、それからベッドサイトの棚からボトルを取り出していた。
こういうボトルは見たことがある。
ローションとよばれてるやつ。
そのヌルヌルを胸に塗られる。
一瞬冷たく感じたそれは、すぐにじんわりと熱を持った気がした。
「じゃあ、今日は胸だけで達してみようか」
当たり前の事を言うみたいに宗吾さんは言った。
僕の質問が口から出る前にヌルヌルになった両方の乳首をぐにぐにとつままれて、悲鳴みたいな喘ぎ声をあげる事しかできなかった。
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