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第61話

雪の結晶の様にキラキラとしているものが好きかもしれないと思った。 特にその好きに理由はなかった。 だから、宗吾さんにどこか行きたいところはと聞かれて星が見たいと答えてしまった。 星は家でも見られるし、もっとすごい星空を見るって事はどこか遠くに夜出かけなくてはいけないという事を言葉にした後、気が付いた。 僕の愚かな思い付きで、宗吾さんにそこまで負担をかけるつもりはない。 あのやっぱり、と撤回する前に宗吾さんは僕を見て、それから「じゃあ、プラネタリウムに行ってみようか」と答えた。 プラネタリウムが星を映し出す映画館のような場所だという事は僕でも知っている。 ただ、僕は映画館にもプラネタリウム行ったことが無いからそもそも比較はできないけれど。 車で少し行ったところに科学館があってその中にプラネタリウムがあるらしい。 時間を調べた宗吾さんが、お昼すぎに上映があるから出かけようかと言った。 外はまだあまり慣れない。 だけど、宗吾さんが行こうかって笑いかけるから、思わず頷いてしまった。 ◆ その場所は大きな公園の一角にあった。 穏やかな場所だと思った。 思ったより人はずっと少なかった。 ぽつりと建っているいる建物が多分プラネタリウムってやつなのだろう。 建物に入ってすぐのところに、地球だとか月だとか、それから土星だとかの模型が並んでいる。 それをぼんやりと眺めていると、宗吾さんがチケットを二枚買ってきてくれた。 仕事をした方がいいのかもしれないと思う。 僕になにかできることがあるのかは分からないけれど。 当たり前の様に渡されたチケットを、そう思いながら見ていると、宗吾さんは不思議そうな表情で僕の事をのぞき込む。 なんて答えたらいいのか分からず「……楽しみですね」と言う。 重たそうなドアを開けると、えんじ色の椅子が並んでいる。 見上げると思ったより天井が高い。 宗吾さんと二人で並んで座る。 座席の背もたれが倒れる事に気が付く。 真ん中にある黒い機械が多分映写機なんだろう。 初めて見るそれを、じいっと見ていると宗吾さんが「今度はもっと最新の機材のあるところに行ってもいいかもね」と言った。 これが古いものなのかは僕にはよく分からないけれど、宗吾さんがそういうって事は、そういう事なのだろう。 詳しいという事は、宗吾さんはこういったものに興味が有るのだろうか。 「宗吾さんは子供の頃、こういうので星を見たんですか?」 古いというのがどの位古いのかさえ良く分からなくて、そう聞く。 宗吾さんは一瞬、少しだけ驚いた様な顔をした後「小学校の時遠足で来たことがあるよ」と答えた。 それから、周りが暗くなって、静かになる。 流れる様な音楽が聞こえる。 パチンと音がした訳じゃないけれど、目の前に満天の星空が広がる。

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