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第62話

思わず僕は息をのむ。 美しい空が見れる場所があるというのは多分テレビで見て知っていた。 だけど、こんなキラキラとしたものが一面にちりばめられてるものだとは思わなかった。 宗吾さんが僕の手すりに乗せていた手に彼の手を重ねる。 一瞬声をあげてしまいそうになる。 プラネタリウムの人が『さて、日没直後の様子に戻します』というと、星がくるっと動く。 春の大三角形の説明を聞きながら、温かい宗吾さんの手にドキドキとしてしまう。 ここが暗くてよかったと思う。多分僕の顔はいま赤い。 からす座の説明が始まる。 からすの伝えた言葉によって恋人を射殺してしまう悲しいお話。 その二人から生まれた子が蛇使い座になっている。 蛇使い座は真夏の夜さがすといいらしい。アスクレピオスの話は触れただけで今日はしないらしい。 それが少し残念に思えた。 何かを知りたいと思ったことは無かった。 春の星空を実際に見てみたいと思った。 夏、さそり座からのびる場所に蛇使い座を探してみたいと思った。 こうやって、また、宗吾さんとプラネタリウムにも来てみたい。 それから、彼が行きたい場所にも連れて行って欲しいけれど、これは望んでも仕方がないことなのかもしれない。 星が好きなのかは良く分からない。 だけど、もう少しだけ宗吾さんと二人でこのきらめく星を見ていたいと思ったのだ。 上映が終わって、周りが明るくなる。 宗吾さんの手はもう離されてしまっていた。 触れられていた手をぐーとぱーを繰り返してまじまじと見つめる。 「嫌だったかい?」 宗吾さんに聞かれて首を横に振る。 嫌だったはずが無い。 ただ、触れられた感触がくすぐったい様な気分になるので手を動かしてしまっていただけだ。 「初めてのプラネタリウムはどうだった?」 宗吾さんが僕に聞く。 「ドキドキしました」 僕の返事に宗吾さんは、一瞬きょとんとした顔をした後、ふんわりとわらって「そうか……。それはよかった」と言った。 ドキドキには宗吾さんに手を握られたことも含まれていると知ったら彼はどう思うだろう。 やっぱり、困ってしまうだろうか。 きっとそうなので、何も言わないことにした。

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