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第66話
当たり前の様に宗吾さんの手が僕の頬に触れる。
撫でられた場所が熱い気がする。
お腹は空いてない。
だから、触れ合う必要も本当は無い。
けれど、宗吾さんはそれをするのが当然という仕草で僕の頬を撫でて、それから僕に口付けを落とした。
心臓がバクバクと音を立てている。
思わず、自分自身の胸に手を当てて音を確かめてしまう。
快楽を拾う事は沢山あったしそれに思考もからだも蕩けてしまうことはあったけれどこんなことは初めてだった。
それを見て宗吾さんは僕の手を取って、それから宗吾さんの胸に僕の手を強く押しつけた。
宗吾さんの胸も僕と同じように、ドキドキとしているのが服越しでも分かる。
「ね、一緒だろ?」
宗吾さんが切なそうな笑顔を浮かべる。
その表情が好きだと思った。
多分僕も似たような表情をしている。
「もう一度、キスしていい?」
宗吾さんが僕に聞く。
言葉で聞かなくても答えなんて分かってるだろうに。
宗吾さんを見上げると、もう一度キスをされた。
相変わらず、とても大事なものを扱うときの様な感じだ。
だけど、今はそこに愛情が込められているのを知っている。
僕にも愛情が込められていることを宗吾さんも知っている。
「もう一度……」
今度は僕が言うと宗吾さんは僕の体を抱き寄せて今度は、深い口づけをくれた。
相変わらず体は熱い。
お腹も減っていない。
だけど、彼にもっと撫でられたいと思った。
触れられたいと思った。僕も宗吾さんに触れてみたいと思った。
上手く言葉にできない。
宗吾さんが、僕の頭を撫でる。
それから「ベッドに行こうか」と言った。
多分宗吾さんも同じなのだと分かる。
「はい」
声にも甘ったるい熱がこもってしまう気がする。
これからするであろう行為に期待をしている。
それは空腹を満たすものではない事は、僕が一番よく分かっている。
食事の為ではない行為。
一度だけ失敗してしまったときの様な不安は、もう無かった。
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