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第80話
「また、すごい面白い子連れてきたね」
大笑いをしながら、ハウスキーパーさんはそう言われている。
やっぱりだめだったのかもしれない。
宗吾さんが控え目に笑ってる声が聞こえる。
見上げると、とても嬉しそうに笑っている宗吾さんと目が合う。
ハウスキーパーさんも、嬉しそうに目を細めてそれから「じゃあ、詳しい話はジャガイモ料理を食べながら」と言った。
「お料理、教えてくれますか?」
僕がハウスキーパーさんにきくと「勿論」と言われた。
宗吾さんの食べるものを作ってみたいと思った。
僕がつくったものを彼が食べる。ハウスキーパーさんは優越感だと表現していたけれど、それとはちょっと違う。
僕がただ、彼のために何かがしたいのだ。彼が僕にそうしてくれた様に。
最初抱《いだ》いた返せるはずが無いとは少し違うけれど似た気持ち。彼が僕に贈り物をしたみたいに僕も彼に贈り物をしてみたい。
「じゃあみんなで料理をして、それを食べながら君の話を聞こうか」
皆でジャガイモの入った籠を持って家に向かう。
土のついてしまった顔を拭いて、それからみんなで料理をした。
眼鏡にまで泥がついてしまっていて慌ててふいた。
これは彼にもらった大切なものだから。
美味しい匂いってやつがどんなものなのかはよく分からなかったけれど、楽しかった。
ずっとそばには宗吾さんがいてくれた。
帰り際、作ったポテトサラダをタッパーに入れて持たせてくれた。
それからジャガイモと、それ以外にうちで作った野菜だよといって、色々な野菜とレシピ。
宗吾さんと二人で挨拶をして車に乗り込む。
最初に宗吾さんの家に来た時と同じ車だ。
だけど、まるで違う心持ちだ。
「宗吾さん。これから僕が誰と出会って、何を始めたとしても、あなたの事が好きですよ」
「……そういうのは車の中以外で言って欲しかったな」
そう言いながらも、宗吾さんが笑顔を浮かべる。
「じゃあ、二人の家に帰ろうか」
と言うと、宗吾さんが車のエンジンをかけた。
相変わらず胸のあたりは温かくて、満たされている感覚がした。
それは多分恋ではなくて愛なのだろう。
了
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