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第2話

碧斗の場合 母さんに金を貸してもらう代わりに、「あおとにギターを教えてやる。」と言って、小さい時からおじさんは頼んでもいないのに僕にギターを教えた。 母さんは笑いながら、「将来、あんたみたいになったら困るんだけど。」とおじさんの頭を小突いた。おじさんは笑いながらひでぇなと言った。 そうしていると、2人は姉弟なんだなーと実感する。 小さい頃は、おじさんがうちに来て教えてくれていた。 だけど、最近は学校帰りの途中におじさんのアパートがあるから僕が通っている。 「あおとの指、細いけど男らしくなってきたなー。」 おじさんが、無精髭を触りながら言った。 高校2年になったばかりのとき、奏にバンドに誘われた。 「碧斗くん?」 黒板を消していると、横から話かけられた。 顔を向けると、普段あまり話さないタイプの奴がいた。茶色がかった髪に若干パーマがかかっている。目つきも鋭い。 警戒していると、ニコッと笑って 「いやー。1発で分かったよー!本当にキレイな顔してるなー。」 僕が呆気に取られ、見ていると 「碧斗くん、ギターできるんだって?今度ライブがあるんだけどギターが抜けちゃってさ、、、。一回だけでいいから、入ってくれないかな?頼む!」と一気に捲し立てられた。 学生生活にも飽きていたし、僕は頷いた。 その日の放課後、バンドの練習を見学した。 メンバーはドラムの原田くんとベースの岳くん。 原田くんはどうやら1年の時、同じクラスだったらしい。らしい、というのは僕が覚えてないからだ。 「碧斗くん、俺たち結構話してたんだよ。 ほら。俺がさドラムやるんだーって話したら僕もギターやってる。って言ってたじゃん。 それ思い出して、奏に碧斗くんのこと話したんだよね。」 覚えてない?と人懐っこい顔で聞かれた。 「ぜんぜん記憶にないや。ごめん。」 原田くんはそっか。と少し残念そうだった。 ベースの岳くんは、身長が高くひょろながい。前髪で顔が見えないが、小さい声で「よろしく。」と言った。 次の日、練習に参加してギターを弾いた。誰かと合わせるのは初めてだったから緊張したが曲が終わると奏がすごい勢いで振り向いてこう言った。 「碧斗くん、君採用!!」 あとで岳くんから聞いたが、奏くんとギターの子は喧嘩したらしい。 結果、僕は正式なメンバーになった。 「仕込んだ甲斐があったわー。よかったよ。あおとがようやく学生らしいことしてくれて。 高校上がっても友達いなそうだったから心配してたんだよ。」 おじさんがギターの譜面を見ながら言う。 「友達ならいたけど、おじさんには話してないだけだよ。」 おじさんは、タバコを咥えながら笑った。 「かわいくねぇなー。本当にそんなんで馴染めてんのかよ。お前、幼稚園のときも1人隅っこでありの巣とかいじってたじゃん。暗いガキだなって思ったね。」 「、、、。いつの話だよ。」 最近はギターを教えてもらう時間が、他愛のない話で終わる時もある。 その時、インターホンが鳴った。 「お。もう時間か。次の生徒来たから今日はここまでな。」 おじさんが、背伸びをしながら言った。 「母さんが、夜ご飯食べに来たら?って。」 僕が言うとおじさんは 「今日は遅くまでレッスンが入ってるから無理だなぁ。また行くわ」と言いながら僕の頭に手を乗せた。 帰り際に玄関を出ると次の生徒らしき人が待っていた。明るめのロングヘアーに濃いめの化粧。 化粧が濃いせいか、目は怖かったが整った顔をしていた。 軽く会釈をされたので、僕も頭を下げた。 夜7時。きっとあの女の人はギターを習いに来てるんじゃない。 家まで帰る途中、僕はおじさんの指、部屋の匂いを思い出していた。 本当はバンドに入ったのも、ギターを続けているのもおじさんと一緒にいたいからだ。 ダメなおじさんのことが、僕は好きだ。

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