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第5話

清香の場合 「清香ちゃん、最近帰り遅くない?」 先生とカフェでお茶したあと家に帰ると、母に言われた。 「まだ、8時だよ?私もう大学生なんだから、早い方でしょ。」 「今日は早い方だけど、、、。 バイトの日に遅いのは分かるのよ。ギターレッスンの日、帰りが遅いんじゃない?」 やっぱり母親の勘はするどい。 「ギター教室の近くに、大学の友達が住んでてさ。たまに話してくんだよね。」 「、、、女の子なんでしょうね?」 「当たり前じゃん。男の子だとしてもね、彼氏くらいいていいでしょ。」 私は笑いながら言った。 「まぁ。そうね。同い年の男の子なら安心ね。」 母はなにか勘付いているかもしれない。 私は聞こえないふりをして、部屋に行った。 早く一人暮らしをしなければ。 ギター教室がマンツーマンなことも、とくに両親には言っていないけど調べればすぐ分かるだろう。 携帯を見ると、先生からメッセージが来ていた。 ー無事家着いた? 大事にされている。はず。 今日、碧斗くんに紹介されて驚いた。家族に紹介してくれるって本気じゃん。 え?真剣に付き合ってくれてたの? 正直、先生と付き合うのは心穏やかではない。 あの色気だ。女がほっとかないだろう。 生徒の大半が女だ。純粋にギター習いに来てる奴なんかいないだろう。 、、、私みたいに。 でも、私は追求しないようにしている。 めんどくさいと思われたら、終わりだ。 それでなくても、たまに困らせてしまうこともある。 だから、付き合う前に自分に誓ったのだ。 心を乱さないようにしよう。 先生と付き合うということは、浮かれてはいられないのだ。 本当は隣の部屋を借りて、レッスンの様子を見張っていたいし、先生が見ていない隙に床に髪の毛が落ちていないか無意識に探している。 堂々とストーカーしたい。 他の女の影を見つけたところで、どうにもできないけど。別れるなんて、絶対にありえない。 かと言って、責めることもしない。 付き合う前だが、一度だけ床に口紅が転がっているのを見た。金色の某ブランドの口紅。 私がそれを見つめていると、先生がさっとそれを拾ってポケットに入れた。 なんであのとき、先生は素早くしまったんだろう? 理由は分からないけど、その時の先生の顔は冷たかった。あんな顔を向けられたら、私はどうなってしまうか分からない。 ふと、碧斗くんの顔が浮かんだ。 あの子も表情なくて、怖い顔してるよな。 照れてるとか?目も合わせてくれなかったな。今日。 キレイだから、余計に怖いんだよな。 まぁでももしかしたら、これから会う機会も増えるかもだし、徐々に慣れてくれるかな。 はやく、心落ち着かせるためにもあのアパートの近くに部屋を借りなければ。 先生だけは、誰にも譲れない。

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