4 / 11

第4話 ※清香

「清香ちゃん、最近帰り遅くない?」 帰ってくると、お母さんに言われた。 「まだ、8時だよ?私もう大人だし、、、。」 「今日は早い方だけど、、、。たまに外泊もするじゃない?」 母は伺うように言った。 「今日は仕事の後、友達とご飯行ってたんだよ。」 「、、、女の子なんでしょうね?」 「当たり前じゃん。男の子だとしてもね、彼氏くらいいていいでしょ。」 私は笑いながら言った。 「まぁ。そうね。同い年の男の子なら安心ね。」 母はなにか勘付いているかもしれない。 私は聞こえないふりをして、部屋に行った。 高校を卒業してすぐに父が亡くなった。 その後から、母はより過保護になり常に私の行動を心配している。 母もまだ仕事をしているが、夜になると寂しく心細いのだろう。 そんな母を一人にして、先生と暮らすなんてあまりにも薄情だろうか? それでもやっと手に入ったのだ。 先生の気が変わらないうちに、一緒に住まなければ。 携帯を見ると、先生からメッセージが届いていた。 「家着いた?」 自然と顔が綻ぶ。 大事にされている。はず。 今日、碧斗くんに紹介されて驚いた。身内に紹介してくれるって本気ってことかな? 正直、先生と付き合うのは心穏やかではない。 ギターを習いに行っていた時も、女の気配を感じていた。 でも、めんどくさいと思われたら終わりだ。 それでなくても、たまに困らせてしまうこともある。 だから、付き合う前に自分に誓ったのだ。 心を乱さないようにしよう。 先生と付き合うということは、浮かれてはいられないのだ。 本当は隣の部屋を借りて、レッスンの様子を見張っていたいし、先生が見ていない隙に床に髪の毛が落ちていないか無意識に探している。 堂々とストーカーしたい。 他の女の影を見つけたところで、どうにもできないけど。別れるなんて、絶対にありえない。 かと言って、責めることもしない。 私は数年前にひどく冷たい顔で、口紅をしまった時の先生の顔を思い出した。 ふと、碧斗くんの顔が浮かんだ。 あの子も表情なくて、怖い顔してるよな。 照れてるとか?目も合わせてくれなかったな。今日。 キレイだから、余計に怖い。 でももしかしたら、これから会う機会も増えるかもだし、徐々に慣れてくれるかな。 誰も近寄らせたくないな。 先生だけは、誰にも譲れない。

ともだちにシェアしよう!