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有罪 3
抱きしめてくれれば少しは暖かいし雰囲気も出るのに と思ったが、佐藤は部屋の入り口で立ち尽くしたまま困った顔でこちらを眺めている。
「上がらないの? あ、ごめん。まずは入り口でしたい人だった?」
振られたことを一瞬でも忘れることができたら とついケイトとやらに成りすましたけれど、相手はきょろきょろと辺りを見回していて戸惑い、その様子は童貞かもしれないと思わせるものだ。
これじゃ、頭を真っ白にして恋人のことを忘れる……なんて夢のまた夢の話だろう。
さっき会った人間とホテルに来るなんてらしくないことをした罰なんだろうか?
でもぽっかりと空いてしまった時間も心も一人では抱えきれそうになくて、縋りたくなってしまったのだから……仕方ない。
それに、今更やめたいと言い出したところで、出口は佐藤の向こうにあるんだから……やっぱり仕方がない。
「えっと……脱がせたい?」
意を決してそう言うと、「あ、いや、どちらでも……」と歯切れの悪い返事が返る。
こうなってくるとオレだけじゃなく相手も乗り気ではないんじゃないかって思えてきて、むっと顔をしかめて一気にシャツを脱ぎ、勢いよく親指で風呂場を指さす。
「じゃあシャワーは⁉ ない方がいいならそれでもいいけど⁉」
きつく言った言葉に驚いたのかそれとも後押ししてしまったのか、佐藤はびくりと跳ねるように体を揺らすともぞもぞと靴を脱いで部屋へと入ってくる。
窓が閉じられていて閉塞感のある部屋が、佐藤の巨体を受け入れて更に圧迫感を増したように思えて、首元を擦って俯いた。
見知らぬ人間と密室に……なんて、とんでもなく馬鹿なことをしてしまったんだとジワリと後悔に苛まれているオレに、佐藤は困ったように「慣れているんだな」と言葉を告げる。
何のことだ と問い返しそうになって、それがオレの振る舞いに対するものだとはっと顔を見た。
表情の読めない佐藤はオレが慣れていることに対して安堵しているのか、それとも軽蔑しているのか……
「な、何それっ馬鹿にしてんのか⁉ あんただってコレが目当てで出会い系してんだろ⁉」
とっさにシャツを投げつけていた。
出会うなりホテル街へと向かったケイトの様子を見るに、佐藤の目的もそうに違いなかった。
それを、自分ばかりが綺麗でこんなところ来たこともありません と言うような顔をされては、こちらとしてはいい気はしない。
「もっと初心な子がくるって信じてたわけ⁉」
「いや……」
だったらナニがしたいんだ?
苛立つ気持ちで佐藤へと大股で近寄り、足元に落ちた赤いシャツを拾い上げて脇をすり抜けようとした。
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