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有罪 5

「や、や……やめ  っ」  佐藤をぐいぐいと押し返すが非力な腕じゃ何も堪えていないようだった。    オレの言動の何かが気に障ったのだろうか?  自分にのしかかる人間がまったく見も知らない奴なんだと改めて思い返して、すっと血の気が引いていく。  人となりをまったく知らない相手に、オレは何をしようとしていたのか。 「あ  」 「違うんだ!」  ハッとするほど大きな声で言われて、ますます身を縮める結果になってしまう。 「君……君の……っ」  言葉に詰まった佐藤は呻くようにして何かいい言い方を探しているようだったが、一瞬深く深く眉間に皺を寄せてぽつりと漏らした。 「唇が、こんなに、気持ちのいいものだとは、……思ってなかったから考えが止まってしまった!」  佐藤がこれほど長くしゃべったのは初めてじゃなかったかと記憶を掘り起こしながら、「だからなんだ?」と言う視線を投げかける。  さっきのオレとのキスが嫌でなかったことはよくわかったけれど、だからと言って今のこの状況の説明がそれでつくとは思えない。    押さえつける必要なんてないのだから…… 「君がに……逃げ……あ、いや、君ともっと一緒に居たいと思ったんだ」  逃げ と言いかけた言葉が気にかかったけれど、オレをまっすぐに見下ろす男の両目は真剣そのもので、からかいを含んだものなんかじゃなかった。  むしろこちらが居心地悪くなってしまいそうなほど真っ直ぐな瞳は、……心臓に悪い。 「君と  」 「佐藤さん、オレはケイだよ」  一時、この真摯な瞳に自分だけを映せるなら、失恋の痛手も軽くなるんじゃないかって思ってしまった。  一人で入るには広すぎる風呂に一瞬身がすくむ。  オレが暮らしているアパートはおんぼろすぎて風呂なんてついていないから、この光景にテンションを上げるべきなんだろうけれど…… 「入らないのか?」  背中に感じる熱量にひっと息を詰めた。  一糸も纏っていないと言う無防備な体に近づいてくる大きな熱の塊に、反射的に身をすくませてしまったが、そんなオレの反応を佐藤は不思議そうに見ている。  光の加減で黒さの増した瞳は汚れの一つもなくて、こんな状況になっているのが不思議なくらいだ。 「準備……も、するから、やっぱり別々に」 「準備?」  小さな子供がきょとんと問い返すような声音で問われて、今からあんたの大きいのが入るように解すんだよ! って言いたい言葉はごくりと飲み込む。 「何か俺に手伝えることは? 必要なことがあるなら手を貸そう」 「か 貸そうって言う話じゃなくて……」  

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