「ゆっくりと、一本だけ　ね」 「一本？」 　やはり問いかけるように繰り返し、佐藤は割れ目に沿うようにして指を一本伝わせて……ぷちゅりと体内を伝って耳に届いた音に羞恥心が沸いた。 「ひぁっ！」 　オレが体を跳ねさせてしまったから指は外れてしまう。 「ああ、すまない。浅かったようだ」 「へ⁉　あさ　　んぁっ！」 　佐藤が任せろ！　とばかりに長くて太い指をぐちゅりと後ろへ深く突き入れる。 　反射で押し返そうと力を入れたのが悪かったのか、ボディソープの滑りを借りて佐藤の指はなんの遠慮もなくずぶりと体内を踏み荒らして…… 　 「ゃ、ああっ！」 　 　キン　と耳が詰まったような感じがした。 　自分の上げた声が大きくてわんわんと頭の中で響き渡ってうるさいと思うのに、腹のキュンとした疼きで思考が何度もその場で前転するような、そんなパニックに陥ってしまう。 　大きいと思っていた指は見た目以上の圧迫感だ。 　それもオレが想像しないようなところまで入ってきている。 「ぁ　……あ……っぅ……」 「それから？　君のいいところを教えてくれないか？」 「ひゃ、　そ、ぁ、ん゛っ！」 　その太さだけでオレの体内はいっぱいだ。 　少し動かされるだけで、こちらは喘ぐしかできなくなってしまう。 「ケイ君？」 　二人とも泡だらけだからか、佐藤はオレが倒れないようにぎゅっと力を込めて掴んでくる。 「んっ……ちが……なんでも、……ぁんっ！」 　くぃ　と体内の指が動いた瞬間、甲高い喘ぎが漏れてしまった。 　とっさに出た言葉とは言え、それは男のオレが出すには矜持が許さないような媚びを含んだような声だったから、さっと口を押えて佐藤を睨み上げる。 「そこ、は」 「前立腺と言うものなのだろう？」 　強く絞まる先を抜けた腹側、そこにあるしこりがどんな名前でどんな効果をもたらすのかはよくわかっていて聞いている様子だ。 　すべてをオレに任せる……みたいな従順なふりをしておいて、あんなタイミングでそこを責めてくるなんて！ 「ココは気持ちがいいのだと聞いた」 　くち……と緩く動く指先が柔らかく撫でるように触れてくる。 　先ほどのように激しくないそれは柔らかな綿ででも撫でられているかのような、むずむずとした気分にさせてくるから始末に悪い。 「ぁっ　そ、だけ、……でもっそこっ　　はぁっ！　ん゛っん゛っ」 　そんないきなり集中して責められたら苦しいと告げようとしても、誰にも理解されない言葉が零れるばかりだ。 　思いのほか器用に動く指がオレの体内を犯していくことに、止めてくれと思いながらも体はそれを裏切ってしがみついてしまう。