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有罪 12

 乳首の感度はあまりよくなくて、触られても「触られている」感触がするだけでそれ以上でもそれ以下でもないって言うような反応しか返せなかった。  だから……そこに触れられて、跳ね上がるほど感じるなんて思ってもみなかった。 「敏感だな」 「ち、ちが っ」  ちゅ、ちゅ、と大きな赤ん坊のように佐藤が繰り返し吸いつく。 「ひぁ!」  真面目な顔をしながら胸に舌を這わされて……  熱い感触にオレが嬌声を零すと、佐藤は毎度の真面目顔を少しだけ崩して嬉しそうに微笑む。   「気持ちいいんだな?」 「……なんでそう、毎回聞くかな。萎える」 「あっ……すまない」  途端しゅんとして真面目そうな顔つきに戻り、佐藤は再び赤い突起と格闘し始める。 「ぁ……んんっ……」  触れることに許可を求めた初々しさが嘘のように、舌を絡めてくる佐藤はこちらが反応を見せるたびに嬉しそうに様子を伺い、いちいち気持ちがいいのかを確認して来る。  丁寧でオレの体を思いやる愛撫はくすぐったかったが、最中にそうやって聞かれたことなんて今までにあったか、思い出そうとしてできなかった。  シャワーを浴びてぐったりとソファーに沈み込むと、注文していた料理を佐藤がかいがいしく目の前まで運んでくる。  ふわりと鼻先をくすぐるいい匂いにつられて腹の虫が鳴るから時間を確認すると、もうとっくに夕飯を食べていてもいい時間帯だ。  入ってから何時間だ? と指折り数えようとしたけれど、それをするには目の前のパスタが魅力的過ぎた。  どちらにしても随分長い間、ベッドの上で絡まっていたんだと思うと気恥ずかしくなってそわりと体を揺する。 「適当に頼んだが……ケチャップとチーズ、どちらがいい?」  指し示されたのはボロネーゼとカルボナーラ。  それをケチャップとチーズと言ってしまう佐藤に思わずぷっと吹き出す。 「どうした? 他の物も注文しようか」 「いや、いいよ。延長になった時点でオレの予算は越えてるし」  学費も生活費も自分でなんとかしている学生の身では、好きなものを好きなだけ……なんて夢のまた夢だ。 「? 費用はすべて俺が持つと言う条件だっただろう?」  「ヘっ⁉」と上がりそうになった声を飲み込んで、「そうだったっけ?」とすっとぼけてみせる。  オレが成りすました相手を思い出して、彼はこうやって食いつないでいるんだろうかとむっと唇を引き結んだ。 「好きなものを頼むといい……ただ、その前にローブをもう少し直してくれないか?」  フライドチキンを置きながら佐藤は目のやり場に困る様子でちらりとオレを見る。    

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