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有罪 13

 本当は体中が敏感になりすぎているから素っ裸でいたい気分を、ぎゅっと押し込めて身に着けている、だから腰ひももゆったりと軽くだけ結んでいて…… 「あっ」  体を揺すった時か吹き出した時か、ローブが乱れてしまっていたらしい。 「み、見苦しくてごめん」  ベッドの中ならいざ知らず、冷静になった頭で他人の体を見たくないんだろうと慌てて紐を結び直す。 「いやっ……その、またしたくなるから……」  自分の言葉が自分で意外だったのか、佐藤は「あ」とか「う」とかを呻いて顔を伏せ、聞かなかったことにして欲しいと言葉を続けた。  伏せられた顔の表情はわからなかったけれど、隠しきれなかった耳の端が赤くなっているのは見ることができたから、オレはくすぐったくなった胸の内をごまかすために急いでカルボナーラに口をつけた。 「いただきます! んっ、おいし!」  ラブホテルの食事に期待はしていなかったが、とろりと絡まったチーズと卵の感触が滑らかでつい声を上げてしまう。  けれどそれが空気を変えたのか、佐藤はそろりと窺うようにオレを見てから自分も食事を始める。  今日会ってそのままラブホテルに入った男同士の会話のネタなんてあってないようなもので、しばらく黙々とパスタを口に運んでいたが……オレが耐えきれなかった。 「あ、あー……佐藤さんは、それで……女と男ではどっちの方がよかった?」  唇の端についたクリームを拭いながら尋ねると、佐藤の視線がそれを追いかけるようにして動く。 「……君の方がいいと思う」 「じゃあゲイ……まぁ、ゲイ寄りのバイかな。ようこそ、こちらの世界へ」  フォークの先でパスタを巻き取りながら、味は美味しかったが量がイマイチだったとメニュー表に視線を移す。  佐藤が負担すると言うのにもう一品頼むのは失礼か? それともこう言う一期一会の相手にこそ甘えてたかるべきなのか迷っていると、佐藤の溜息が聞こえてきた。  ちらりと視線をやれば、眉間に皺を寄せて頭を抱え込んでしまっている。  オレが恋愛対象は男だと言うことを認識したのは幼い頃だ、思春期特有の悩みもあったし大変だったけれど、佐藤の年で自覚するとまた違った騒動が起こるんだろう と、空になった皿を端によけながら思う。 「参ったな」 「問題あるの?」    軽く聞いてしまったが、問題が山積みなのは当然なことに気づく。  オレの無神経な言葉に苦笑いを返して、佐藤はボロネーゼの入った皿をこちらに押しやった。 「口つけてないから食べて。あの量じゃ足りないだろ?」 「いいの⁉」 「チキンもよければ食べてしまって。他に食べたいものがあれば注文していいよ」

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